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Dog eat Dog 41
なんなんだと睨みつけてやろうとするも、こちらを見返すケダモノの目に身が竦む。
「ぅ 、はぁ ……はぁ 俺が初めてとか、 はぁ ほん えっマジ?は?訳わかんないんだけど? はぁ 」
「おい!ちゃんと息しろ!息!息!」
肩を跳ね上げながら浅い呼吸をする時宝の腕から無理やり逃げ出して、明らかに変わり始めた様子に悪寒を感じて後ずさった。
ぶつ ぶつ と何かを呟きながら這いずるようにオレの方へと向かってくる時宝に、牽制のためにソファーのクッションを投げつけてみるも……逆に刺激を与えてしまったようで、足首を掴まれて勢いよく引っ張られてしまう。
「ぃ っだ‼」
後頭部が跳ねてもお構いなしで、時宝はそのままフローリングを滑らせてオレを自分の下へと引き入れた。
自分のテリトリーにいたはずなのに、時宝の下はそんな安全圏ではなくて……
αにギラつくような目で見下ろされると、どうにもΩな自分を思い出させられて、落ち着かずに這い出そうとした。
「どこ……行くの?」
「ひ ぃ 」
すん と時宝の鼻が鳴る。
「俺の オメガの匂いがする いい匂い 」
意識してはいないのに……一度体を繋げた相手だからか、傍にいるだけでざわざわと体中が落ち着かない。この男のフェロモンが舐めるように体に降ってくるのがわかった。
追いかけるように視線がオレの上のなぞって行って、スーツを着ているはずなのに肌に触れられたような、そんな感触がして少しでも逃げることが出来ないかとぎゅっと体を抱き締める。
オレの逃げようとした感情が分かったのか、時宝がせめてもの盾としていた両手を掴んできた。抵抗しようと思えばできるはずなのに、力が敵わないとか、疲れているからとか、そんな言い訳を考えながらあっさりと床に縫い付けられて、動けないまま息を潜める。
変態みたいにはぁはぁと荒い息をしていても、それでもカッコイイと思わせる顔立ちを見上げて、そろりと窺うようにその目を見詰めた。
何を見ているんだろう?
大沢の時に感じた真っ直ぐで真摯な雰囲気の黒い瞳に、怯えるような情けない自分が見えた。
「 っ」
怯えて見せたところで可愛げの欠片もないその姿はこの状況に混乱している頭を冷ますには十分で。
ふ と体中の力が抜けた。
「 は ぁ、 まどかさん、どうしたの? はぁ っまどかさん?」
短く息を吐きながら問いかけられたけれど答える言葉が見つからなくて、更に深く窺うようにじっと見上げるしかできない。
怪訝な表情でじっと見て、時宝はぐっと堪えるように唾を飲み下してから、さっきまでの荒々しい手つきとは打って変わった仕草でオレを引き起こす。
激しく上下する胸は、きっとまださっきの興奮を抑えきれていない証拠だ。なのにそれを無理矢理押さえつけて落ち着こうとしてくれているのだから、時宝の本質は大沢に近いのかもしれない。
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