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お可愛いΩ お可哀想なα 3
「待つよ?皆で食べようよ」
「抑制剤貰う日だから遅くなるんだよ」
「医者に来て貰えばいいのに」
「だよなぁ。呼んであげようか?」
なんて台詞が出るのは、この二人の親が金持ちだからだ。
αΩの両親とも男親で、片方は社長、片方はどっかの国の王族とアポなしで会える上流階級なんて言うんだから、その二人と幼馴染している一般人のオレはその感覚にくらくらする時がある。
病気でもないのに医者を呼ぶって感覚がすでにオレには良く分からない!
「いちいち病院とか、めんどくさくなーい?」
「面倒だよね」
「面倒でもなんでも、義務なんだからちゃんとしなきゃなのっ!二人はちゃんと貰ってるの?使用期限切れてたりしない?二人ともアルファなんだからちゃんとそう言うとこはしとかないと!」
「えー?」とのんびり返事を返されて、説教の一つでもって思ったけど、そうだった!時間がないんだった!
慌ててついでに持って行こうと昨日の夜に用意しておいたお父さんの着替えの入った紙袋を掴んだ。
「もう行ってくるからね!変なことしないでよ!」
そう言うと、良い子のお返事的に「はーい」と言う言葉が返って、追いかけるようにいつもの言葉が続く。
「いってらっしゃーい」
「ちゃんと人通りの多いとこ歩けよー」
「気を付けるんだぞー」
いつも通りの送り出しの言葉で、いつも通りの日常なんだけど、やっぱり薫達がいないせいか何だか物足りなくて……
少し病院に行くのとか億劫だったんだけど、オレを診てくれるおじいちゃん先生がいるのが月一回だけだから、これを逃すと来月になってしまう。
一瞬、来月でもいいんじゃないかって誘惑もあったけど、そこはきっちりしないとってほっぺたをぱんぱんと叩いて走り出した。
昔は診察の度に診察券を出して受付してってしてたらしいけど、今は耳につけられているタグと病院が紐づけられているから、受付なんてせずに直接各診療科に行けばそれだけでいい。
昔、お父さんが教えてくれたんだけど、各診療科への廊下の入り口でデータを読み取るのと、体温脈拍等々の読み取りも行われているんだって。
「 ────あ、君、そっちはアルファ科よ!」
予定時間が迫っていて、急いで行こうとしていたオレを呼び止めたのは見た事のない看護師さんで……
「あ、えっと 」
産まれてからずっと通ってきている場所だから間違っていないんだけど、それをどう説明したらいいかなって悩んでいると、看護師さんの後ろから「その子はいいのよ」って涼し気な声が聞こえた。
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