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お可愛いΩ お可哀想なα 5

「きちんと渡すからね」 「はい、お願いします」  さら と流れる黒髪を追いかけちゃうのは、男の本能なんだよきっと。 「まだ先の人がいるみたいね、一緒に待ってようか?」  こんな女の子みたいな外見でも、オレはちゃんとお年頃の男なので、こうやって子供扱いされると地味にヘコむ。 「うぅん、大丈夫です!お仕事に戻って下さい!それから、あの、父に えと、お仕事お疲れ様ですって伝えてください」  そう言うとうたさんはにっこり笑って頷いてくれた。  外は暗くて、最後の予約枠のせいか待合には誰もいない。  静まり返った病院は一人でいるにはちょっと寂しくて怖いかなって思うけど、わざわざこの時間の枠をオレの為に取ってくれるのはおじいちゃん先生の優しさだ。  人の多い時間にオレがここにいると混乱させちゃうから。 「  ──── では、先生。またよろしくお願いします」  そう声が聞こえて診察室のドアの開く軽い音がした。 「あっ」  診察室の扉は小さくはない筈なのに、その人が通ると小さく見えるから不思議だった。 「おじさん!」  声をかけてぱっと椅子から立ち上がって頭を下げると、診察室から出て来た人物は小さく「六華か?」と尋ねてくる。 「はい!」 「そうか。大きくなったな」  そう言って大きな手で頭をぐりぐりされると小さい背が更に縮みそうで嫌なんだけど、オレを見て「大きくなった」って言ってくれるのは仁達のお父さんぐらいだから、オレはこの人が大好きだ。  銀花は大きすぎだし筋肉むきむきだしで怖いって言うけど、逞しくて頼りがいがあって、オレはこんな人になりたいって思う。  ムキってなりたい!  フライパンを曲げれそうな筋肉に憧れる! 「仁と義は相変わらず入り浸っているのか?」  そう言うと仁と良く似た顔が渋く歪んだ。 「今日も泊まるって言っていたので」  オレの答えを聞いて溜め息を一つ吐いた。  そうだよね、ほぼ毎日うちに泊まって、家に帰るのって着替えが無くなった時くらいじゃないのかな?それもお手伝いさんに取りに来て貰ってたりするみたいだし……  二人とも全然家に帰ってないってことだ。 「そうか、面倒を掛けるな。何かしでかしたら遠慮なくやってくれていい」  許可をくれたってことは、本気で説教していいんだろう。  ちょっと一度しっかり腰を据えて説教したかったから「はい!」って返事を返すと、口の端を穏やかに上げる笑みを見せてもう一度頭をぐりぐりと掻き混ぜてからオレに入り口を譲ってくれた。 「お。六華くん、いらっしゃい」 「こんにちは」  そう言ってちょこんと丸椅子に座っておじいちゃん先生の方を向くと、いつもと変わらないにこにことした笑顔がある。  Ωの と言うより、バース性研究で有名な人らしいんだけど、オレからしたら小さい頃から診て貰ってるおじいちゃん先生。 「今日は抑制剤の処方で良かったかな?」 「はい!お願いします」 「うんうんうん、じゃあついでにいつもの検査もやっておこうか」  そう言っておじいちゃん先生がいつもの検査の準備を始めて……

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