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お可愛いΩ お可哀想なα 6

 注射は苦手なので出来るだけ見ないようにして、それから脇に綿を挟んだり、問診したり、いつもと変わらない検査をしてから最後に小瓶を三つ渡された。  蓋に赤と青と黄のシールが貼られている以外すべて同じに見えるそれは、中に綿が入れられていてそれにフェロモンが滲みこませてある らしい。 「じゃあ青から行こうか」  そう言われてそろりと青いシールの貼られたガラス瓶の蓋を開けて鼻に近づけるけど……うん、無臭。 「次は赤ね」  先程と同じように今度は赤色のシールの瓶の蓋を開け、促されて黄色いシールの方も蓋を開けて嗅いだ。  うん、無臭。  でも「無臭」って答えるのが嫌で、何かいい言い回しはないかなって考えていたら、「無臭だね」って言いながらおじいちゃん先生はさっさとパソコンに打ち込んでしまった。 「ま まだ何も  言ってないですよ」 「いやまぁ、匂わないんでしょう?」  反論できずにこくりと頷く。 「そっかぁ 君ももうパートナーシップを結べる年だもんねぇ」  ぽちぽちとパソコンのキーボードを鳴らしながら「んー」と首を傾げ、指の先でくるくると器用にボールペンを回して見せる。その回し方が余りにも見事だから、おじいちゃん先生の言葉よりもそっちに集中してしまう。 「んんーどうしようかなぁ」  そう呻いたタイミングで奥からおじいちゃん先生のお孫さんの若先生が、抑制剤の入った袋を持って顔を見せた。  おじいちゃん先生から比べたら、ものすごく堅苦しい感じの人なんだけど一生懸命なのが分かるから、この人も好きだ。 「こんにちは、久しぶりだね」 「はい!お久しぶりです」  若先生の差し出してくれる袋を受け取って、中身を確認する。  そこにはペン型の注射器が入っていて、そのラベルには『α用緊急抑制剤』の文字がしっかりと入っていた。  αがいざと言う時に使う抑制剤。  オレが貰いに来た薬だ。  そう、オレはこんなだけど……α なんだ。 「間違いないかな?」 「はい!」  袋の中の注射器に視線を落として、オレを唯一αだと証明してくれる注射器を鞄にしまい込む。  外見でバース性を判断してはいけない ってのは学校で習うことだけど、やっぱりバース性なりの外見的な特徴ってのがあって、背がちっちゃくて筋肉も全然ムキってしてないし、キラキラしたオーラもないオレは、文句なしのΩの外見だった。

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