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お可愛いΩ お可哀想なα 9

 高校に入って、このなんとなく一人でこの公園を歩いている時に、いかにもって車と二人組に押さえ込まれて……ヤバかったんだよね。  無事だったのはそんなオレを見つけた薫と喜蝶が大声を上げてくれたから。  怖くて、逃げ出してもいいはずなのに声を上げて、助けようとしてくれて……  咄嗟のことだったのかもしれないけど、危ないことをしてくれたんだなって今でも思う、でも二人はそれでも躊躇なくオレを助けてくれた。 「この辺だよなぁ……腰が抜けて動けなくなって……」  へたり込むオレに薫は飲み物を買ってくるって言ってくれて、喜蝶はオレに付き添って一緒に座り込んでいて、  『──── お前、アルファなのな』  ドキッとしたのが驚きからだったのか、嬉しさからだったのか分からなかったけど、苦い物を食べた時のように顔を顰めてバニラ味の飴を口に入れる喜蝶をぽかんと見上げたのはよく覚えている。  オレを初めてαとして見てくれたのは、喜蝶だったかもしれない。  だから、薫のことも大好きだけど、喜蝶のこともそこまで嫌いとかそう言うんじゃなくて、なんて言うか……大事だった。  そうだな、二人には恩を感じていた ってのがしっくりくるかも。 「だから、困ってたら何かできないかなって思うんだけど」  携帯電話を見てみるも、その明るい画面には何のメッセージも表示されていなくて、やっぱりかって諦めとがっかりさで足が動かなくなった。  あの時二人が助けに入ってくれなかったらオレがどうなっていたかは知らない、もしかしたら無事だったかもしれないし、どこかに売り飛ばされていたかもしれないし、もっと最悪な事になっていたかもしれない。だから、あの時心配して駆けつけてくれた二人のことが、オレは心配で心配で仕方ないんだ。  「ただいま」と小さく声に出しながら玄関に入ると、ちょうど風呂上がりの銀花が寝間着姿で風呂場から出てくるところだった。 「おかえりぃ」  にこにこっと今日もご機嫌な銀花はオレみたいに悩んだりすることがあるのかな? 「どうしたの?あ!泡とかまだついてる⁉」  じぃっと見上げるオレの視線が気になったのか、銀花はぱたぱたと濡れた髪を触り、オレに見つめられる原因を探しているようだった。 「でっかいなぁって思っただけだよ」 「! ホント⁉実はまた身長が伸びてたんだ!今ね、あとちょっとでみちかに届くくらい!」  嬉しそうに言うけれど、お兄ちゃんはそんな弟の肩までもないって分かってくれてるのかな?くそぅ……羨ましい。

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