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お可愛いΩ お可哀想なα 15
「そうだよね、特進第一って別世界だもんね」
「だよね、近寄りがたいよ」
皆むやみやたらとキラキラしてて圧が強いから、クラスを覗き込むだけでもいろいろ消耗しちゃうんだよ!
「あ!じゃあ海までに薫くん達がこなかったらどうするの?」
「どう って えーっと……」
「銀花くんの班に入るのかな?」
きょとん とした黒い瞳は悪気はないんだろうな。
「や……だって、あっちは特進第一で固まってるし……」
「じゃあ!じゃあ僕達の班においでよ!」
「え⁉いいの⁉」
思わず食い気味に言ったせいか釘宮くんはちょっと引き気味だったけど、でもそれを見なかったことに出来るくらい、その申し出は嬉しくて……
「もちろんいいよ!僕達オメガで固まってるから!」
「αがいてくれると心強い」じゃなくて「Ωばっかりで安心でしょ」って言外を感じてしまって、思わずしょんぼりしそうになった。
でもでもでも、何はともあれ入れてくれるって言うんだから、虎徹先生の生暖かい慈愛の目をこれ以上見る必要もなくなって一安心だ。
卵を買い足して家に帰る途中、マンションを見上げると自分の家に明かりが点いているのが見える。
銀花達がいるのか って思うとちょっと憂鬱で、他にも買わなきゃいけない物があったかな?とか、どっかでお茶でも飲んで時間でも潰そうかな?とか、いろいろ考えたんだけど、宿題もしなきゃだし海の学校の準備の再確認もしたいし……
絶対リビングでまたグダグダしてるよ……
キッチンに行こうと思ったら絶対そこを通らないといけないから、絶対声かけられるし、絶対気まずい!
今朝は仁とのことがあったから、三人が起き出す前に急いで出て来たから顔は合わせなかったけど、ずっとそう言うわけにもいかない。
オレがいるのにあんなことをする三人が悪いのに、どうしてオレがこんな風に悩まなきゃいけないのか考えたら、怒り出したくなるけど……正しくはオレが邪魔者なんだよね。オレがストップをかけなかったら好きなだけあの三人はイチャイチャできるし、お父さんに告げ口される心配もないしで青春を謳歌できるわけだ。
オレがいない方がいい んだ、ろうな。
「…………」
卵買うんじゃなかったなぁそうしたらどっかで時間潰せたのに……って、マンションの前でだいぶ長いこと見上げてたんだと思う、薄暗かった空が暗くなってきてて帰らなきゃって思うのに、何故だか嫌な感じがして足が進まない。
仁にああやって言われて、義にも言われたら嫌だな とか思ってるせいかなぁって思うけど、なんだか胸騒ぎがするような気がする。
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