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お可愛いΩ お可哀想なα 14
フェロモンを感じなくても気配で分かる……仁は今、オレを威嚇してる……
「──── オレ達と銀花は運命だ。時が来ればどちらかがあいつを番にする」
低い声は、いつもバカ犬を演じてる仁とは違う。
運命を見つけたαがΩのために戦う時の声だ と、本能の何かが囁く。
「お前が口を出すことじゃあない」
低く脅すような声は、オレには関係ないってバッサリ切り捨てる声だ。
「わ わかってるよっだからオレはっ 」
小さい頃から四人でいたし、ずっとそうだと思ってたけどっ!
オレだけ違うから……
運命の組み合わせではないオレは、四人でいたらただの邪魔者でしかなくて、
「だからっ!」
三人から離れたんだろっ!
って言えないまま、かろうじて「卵焼き作らなきゃ」って仁を押し退けた。
仁も少し気まずそうにしてから素直に離れると、「卵は甘くしてくれ」って勝手なことを言って二度寝をしに部屋へ戻ってしまう。
泣きそうになりながら卵を割ろうとしたのを止めて、小さく鼻を啜った。
昨日感じた幸せさ……それを思うと運命に出会うと言うのは、それだけで人生をバラ色にしてくれる素晴らしい物なんだろう。
かけがえのない、とても大事な……
羨ましさに気持ちがぐるぐると悪い方へとなだれ込んで行くから、それを見ないふりして塩のケースを引き寄せた。
塩マシマシの卵焼きはしょっぱくて、一口で食べきれずに箸を下ろす。
オレでこれってことはあの三人は悶えているかもしれない……ざまぁみろ……
「まぁ、食べれないほどじゃないし、残されないよねー」
食べ物を粗末にするのは本意じゃない!
「何が残されないの?」
へ⁉と顔を上げると、隣のクラスのー……誰だっけな?体育大会とかで同じグループになって、皆でわいわい話したことのある子だった。
ちょっと印象に残っているのは、黒髪で可愛い系だったから!
そう、えっと、名前は釘宮くんだ!
「あっえーっと、卵焼きが、ね。ちょっとしょっぱいし、形が崩れちゃったから」
「ホントだ!」
オレの弁当に視線を落として、彼はちょっとおかしそうにふふ と笑って隣に腰掛けて来た。
「一人で食べてるの?」
「うん、薫達お休みしてるから」
「ええー!知ってたらうちのクラスに呼んだのに!」
こちらがびっくりするほど大袈裟に驚かれて、こちらが恐縮してしまうほどだ。
「銀花くん達と食べないの?」
「えー……だって、特進第一って校舎が違うから遠いでしょ?」
オレのクラスと、特に成績優秀者……つまり大体がαで構成されたたった一組だけの特進第一とでは、クラスのある校舎自体が違ってて、会いに行こうと思ったらぐるっと回って渡り廊下を通らないといけない。
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