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お可愛いΩ お可哀想なα 13
けれど、たまらないほどの多幸感……
銀花を通して感じたその感情を、あの幸せさを……
「……オレの運命にも、感じて欲しいなぁ」
溜息を吐いて視線を下げると、箸に串刺しにされた哀れな卵焼きが寂しげに弁当の中で転がっている。
いつもは綺麗に巻けているそれを見て、ますます重い溜息が出ることになった。
眠い目を擦りながらフライパンを温めて……卵焼きとご飯だけは毎日出来立てを詰めたいからこうして頑張っているんだけど、今日はパスしても良かったかも。
「 ────相変わらず早いな」
背後から聞こえた仁の声に、思わず握り潰しそうになった卵を慌てて置いて、ギクシャクと振り返って「おはよう」って言葉を返した。
まだまだ銀花達の起きてくる時間じゃなくて油断してたせいもあるけど、やっぱり昨夜のことを思うと視線が明後日の方に動く。
「おはよ、あー……今日は俺達のも弁当作ってよ」
「また⁉」
「だって、おじさんのご飯、冷めても美味しいし」
って言いながら、テーブルに広げてあるお弁当のおかずを摘まもうとするからペチンと弾いた……んだけど、この手で昨日、銀花のココやアソコやあんなトコロを触ったのかと思うと、急に気恥ずかしくなって、慌てて冷蔵庫にしがみついた。
「 っ、えっと、もっと出すから……つまみ食いはダメだよ!」
仁の顔が見れないままにそう言って冷蔵庫の中身を探す振りをしていると、背中にとん って人の温もりが触れた。
その温かさが誰の物なんか分かりきっているせいで、「ぅひぃ」なんて変な声が出て……
「あ、な、に、 ?」
「……おまえ 」
どん と冷蔵庫に壁ドンされて、背中にひんやりとした感触を感じる。
「起きてただろう」
「な、な、な、なんのことっかっわかっわかっ わか 」
冷蔵庫との間に挟まれて身を小さくして触れていないのに、大きな熱量で覆い被さってこられると変な汗が背中を伝っていく。
「覗いてたのか?」
いつの間に大人の声になった仁が耳元で低く唸るように確認してくる。
「銀花を見た のか」
「き 聞こえて来ただけだもんっ!」
思わず反論したけれど、起きてたって肯定しちゃったも同然だった。
「あ、ぅ゛ だ、だってっ普通気がつくだろっ⁉オレもいるのわかってるのに!人ん家でナニやってんだよ!もうちょっと節度とか、慎みとか常識考えて って言うかっ!オレはっお父さんに銀花のこと頼まれてるんだよ!銀花にそんなことするんだったらもう泊めないし、近寄らせないからね!第一まだそう言うことは早 っ」
どん! ともう一度冷蔵庫を叩かれて、驚いて勢いに乗った言葉を飲み込んでしまった。
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