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お可愛いΩ お可哀想なα 12

 仁と義が泊まりに来る って言うか、仁と義の寝床はベッド脇の床に引いた布団なんだけど、ちょっと目を離したら銀花の布団に潜り込むなんてしょっちゅうあることだった。  でも、それはある程度の線引きがされているものだとばかり思っていたから……  『  ぁ』  夜中にベッドの下から抑え込むような声が聞こえてきた瞬間の、心臓の跳ね上がる感覚を思い出して慌ててぷるぷると首を振る。 「こんなとこで思い出しちゃダメだよっ  」  ここが学校じゃなくて家だったら、大きな声で歌ったりとかして気を紛らわせるんだろうけど、学校の中庭でそんなことできない!  『 ん   』  艶っぽい声と同時に駆け上がって来たぞくぞくとした感覚に、オレは銀花がどう言う状況なのか一瞬で悟って、「このバカ犬が!」って二人を怒鳴りつけてやろうと体を起こそうとして失敗した。  自分じゃ、どうにもならない、快感 がっ! 「~~~~っ」  ぐっと唇を噛み締めて、壁ドンならぬベッドドンをしてやろうかと足を上げかけた時、「六華が起きるからしーだよ」って義の声が聞こえてきてしまって、まだ目はぱっちりだよっ!って怒鳴り上げたいのに気まずさに負けて足をそろりと降ろす。  ざわ と、耳の辺りに鳥肌が立って小さくまた「 ぁ」って銀花の声が上がった。  オレは両手できつく口を押えていたからなんとか声を出さなかったけど、ぞわぞわとする感覚は消えてくれない。 「  きも、ち ぃけど、りっか が、起き  」 「大丈夫、そっとするから」  そっとするからとかじゃないっ!  声するし!  何より…… 「  ィ 」  一卵性の双子の感覚がシンクロしやすいって話の御多分に漏れず、オレ達もそう だ。  小さい頃はもっと手を取るようにわかったけれど、大人になるにつれて加減を覚えて。今ではよっぽどの感情の高ぶりじゃないと繋がったりしなけれど…… 「   」 「   」 「   」  小さく小声で、布団に声を押し付けるようにして何事かを囁き合っているのが分かる。  不快感はない、  あるのは、泣きたくなるほどのただただ幸福な…………  息を詰めるような気配にこちらも動けないでいると、ごそごそと動き出す布の擦れる音がする、追いかけるようにティッシュを抜き取る音とか、誰かが洗面所にこっそり行く音とかがして、その妙な生々しさにオレはますます動けなくなって、声を潜めながら幸せそうに何事かを囁き合う声を聞きながら……  まぁ我慢したわけなんだけどもっ! 「治まってよかったけど、治まらなかったらヤバかったよぉ」  どんなに外見がΩらしくても中身はお年頃のオトコノコなので、傍であんな気配を垂れ流されちゃうといろいろなとこがまずいことになっちゃうので。

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