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お可愛いΩ お可哀想なα 19
困り果てて眉尻が下がりきってしまって、でも答えを持たないオレはもじもじしながらこっそりとお父さんを盗み見るしかない。
「見た目だけなら、お前は十分にオメガなんだから、気を付けないとダメだろう?」
すべてのボタンを留め終えて、お父さんは溜め息を吐いてしまう。
困らせたいわけじゃないんだけど、幾らそれっぽくなくてもαの自覚のある自分がΩのように見られるって言うのは実感がなくて、「気を付ける」ってだけしか返せなかった。
銀花がいれば、会話ももう少し弾むのかもしれないけど、あんなことがあった後なせいか二人きりの食卓は余り会話がなくて……フランスパンをちぎりながらちらりとお父さんを盗み見るけれど、視線は合わない。
ちょっと って言うか、やっぱりオレとお父さんの仲ってだいぶギクシャクしてるなって思ってしまうのはオレの勘違いじゃないと思うんだけど、いつもは間に銀花がいてくれたからこんな空気にならなかったんだと思うと悲しくなってくる。
お父さんは、オレと話す時はちょっと気まずそうな顔をして……あんまりこっちを向いてくれない。
「 今日、どうして帰って来たの?」
会話の糸口って思って出た言葉だけど、後で言葉が悪かったかなってちょっと思った。これだと帰ってきてくれたのが余り嬉しくないように聞こえちゃったかもしれなくて、慌てて言い直す言葉を探した。
「あっのっ ちが、昨日、まだ着替えがいるって言ってたから、不思議だなって!あと一週間くらいは帰ってこないんじゃないかなって思って!突然でびっくりしたし!……えっと、帰ってきてくれて嬉しい、から」
そう言うと、お父さんはちょっとおかしそうに微笑んで見せてくれる。
「研究の区切りが良かったからだよ。ここの所、全然帰れてなかったから」
「そ、そか えっと、…………今日のって……なんだったの?」
そう切り出すとお父さんはシチューを掬いかけで止めて、しばらく考えるように視線を伏せた後に手を下ろした。
「あの三人が、運命の関係だって言うのは知ってるな?」
「? もちろん」
だからあの三人はいつもベタベタしているし、常に傍にいないと落ち着かないみたい。
三人とも昔からテーラーメイドできっちりと体質に合う抑制剤を使っているから、まだ結婚もパートナーシップを結べる年になってなくても噛んだ噛まれたの問題は出てないけど、それも時間の問題かなって思う。むしろ昨日の夜みたいなことが今までなかった方が不思議なくらいだ。
いや、オレがいったん寝たら起きないってだけで、今までにもあったのかも……って思ったら、今度からなんだか寝るのが怖い感じもする。
「いつかどっちかが番になるって言ってたし」
そう言って、羨ましさを誤魔化すためにシチューの中のジャガイモをつつく。
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