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お可愛いΩ お可哀想なα 20

 仁と義が銀花の運命の番なのは、おじいちゃん先生も太鼓判を押す事実で……なんで相手が二人なのかって目を白黒させていたオレに、おじいちゃん先生は丁寧に説明してくれたことがあった。  ────Ωに対して、αは二人  一人のΩに対して、運命の相手であるαは二人存在するそうだ。  理由は、今のところではあるけれど、競い合ってより良く強い方を選べるように だとか、αはΩを守って戦わなくてはいけないことが多くて、命を落とす可能性もあるから だとか言われているらしい。  αの数がΩの倍であることの理由らしいけど……  『ま、君達すぐに番っちゃうからなかなか証明できないんだけどね』  って軽ーく言っていたのが印象的だった。  運命の相手って言うのは要はつまり遺伝子的に相性のいい人間のことらしくて、その遺伝情報が似通った兄弟である仁と義は共に銀花の運命の相手だったと言うわけだ。  『同じ兄弟でも信くんは反応しないから、面白いよね!』  って、二人の更に下にいる弟のαの名前を出されて不思議に思った。  遺伝情報が似通っているなら確かに、おじさんとこのαが全員反応してもいいはずで……でも仁と義だけって言うんだから、まさに三人の関係は運命なのかもしれない。 「お父さんは、あの二人と番になることを認めない」 「へ⁉」  思わず飛び上がってしまって、膝がテーブルにぶつかったせいかまたシチューが少し零れてしまった。 「だだ だ、だって、運命の相手だよ⁉おじいちゃん先生も太鼓判押してるのに!」  この国のほとんどのαとΩが住んでるって言われるつかたる市だけど、それでもやっぱり運命に出会う確率って言うのは酷く少なくて……  特に最近は抑制剤もすごくいいのが出てるから、気付かないこともあるくらいで……そんな環境の中で出会えたのは本当に奇跡だと思うし、お父さん自身だって運命の相手と出会ったからその嬉しさは知っているはずなのに…… 「なんで⁉まだ学生だから?それとも、家柄が……違うから?」  普段はそんなこと思わずに交流しているからぴんと来なかったけど、うちは普通の家で、向こうは幾つも会社を持っていて、長期の休み毎にどこぞの国の王宮に遊びに行くとか言うセレブだ。そう言う生活を好む人もいるだろうけど、おっとりとした銀花はそう言ったことに特には興味を示さないし、そんな生活をしたいとも思っていないと思う。  住む世界が違いすぎるのは良くないと言われて納得は出来るけれど、それが運命を引き裂く理由にはならないと思う! 「そう だな」  お父さんの口調は歯切れが悪くて、他にも理由がありそうだったけど聞いて教えて貰える雰囲気じゃなかった。

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