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お可愛いΩ お可哀想なα 21

「まだ若すぎるし、子供部屋のためだけに、一階まるまる改築するような家とうちじゃあ釣り合わないだろう?」 「そ、それであんな騒ぎになったの⁉で、でもっだってっ  銀花はすごく幸せそうだったよ⁉」  そりゃ……ちょっとそう言うことするのは早いんじゃないかって思うけど、周りの子達ではもうそう言う経験している子もいたりするし、隠してるけど番になっている子だっている。  だから、特別早い訳でもないと思う!  それに昨日の夜に感じた幸福感を思うと、それを認めないと言うお父さんに腹が立つほどだった。 「運命といれば幸せだから?この先もそれだけで幸せに暮らしていけると言うわけじゃないだろう?」  子供の理屈と大人の理屈を並べられると分が悪くて……  現実は、「こうして幸せになりましたとさ。おしまい」で終わってしまわないことをわかっているだけに言葉が出なかった。 「銀花のフェロモンを抑えるために、あの二人が丁度良かったから傍にいることには何も言わなかったが、一線を越えるようだと話は違ってくる」  そう言ってお父さんはすん と鼻を鳴らす。  ……お父さんが、薬に頼らないフェロモン抑制の研究をしているのは知っている。  それを応用して薬の服用ではなくて香水とかルームフレグランスでフェロモンを抑えることが出来たら と、昔言っていた。  その研究過程で、αのマーキングがΩのフェロモンを隠す、もしくは弱らせる、あるいは偽装させるんじゃないかって言う発見があったのは聞いていたけれど…… 「これは向こうの家とも意見は一致している」 「え⁉」  勢いよく立ち上がったせいでまたもシチューが零れてしまった。流石に今度はお父さんも怒ったようで、眉間の皺が深くなる。 「なん……なんで⁉だって  せっかく出会えた運命だよ?」  それでなくともαの半分は絶対に運命の番と出会えなくて、残りの半分も出会える確率なんてすごく少ない。それが産まれた時から傍にいる なんてことは本当に奇跡じゃないかって確率だから…… 「運命だから必ず結ばれなければならないわけじゃないし、運命だから必ずいいパートナーとは限らない。むしろバース性に囚われてもっと幸せになれる可能性を潰している場合もあるだろう」 「そん、な、のは……なかったことの証明なんて出来ないよ!」 「お父さんは、銀花も六華も運命に関係のない相手と人生を歩んでもらいたいと思っている」  運命ってやっぱりいいなって、あんなに幸せな気分になれるんだって感じたばかりだったから、余計にお父さんの言葉に反発を覚えてしまって、「いやだ!」って言って立ち上がった。 「お前は幸いフェロモンに左右されない体質なんだから、自由に生きなさい」 「幸いってなんだよ!」  αの癖に匂い一つわからなくて、検査の度にがっかりすることとか、ひょろっちくて全然大きくなれないこととか、好きな子に意識してもらえないこととか、変な目で見られたりすることとか、悔しい思いしたりとか嫌な目にしか合ってきてないって言うのに!

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