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お可愛いΩ お可哀想なα 59

「一人で先に行くからどうしようかと思った!」 「ごめ……」 「どっちに行ったかもわからなかったしっ」 「ごめんって、  」  でも三人が来てくれたってことはシュンが呼んでくれたってことで、今頃、寮に辿り着いているだろう。  仁と義も来てくれたし、これで一安心。  ほっと胸を撫で下ろして、心配そうにこちらを覗き込む銀花にこてんと頭を預ける。 「  はぁ、どうなるかと思ったぁ」  カッコつけたのにシュンを助けることができなかった挙句、オレまで襲われました……なんてことになったら、オレ一人泣くだけじゃなくて多くの人を傷つけちゃうもんね。  って言っても、今でも銀花はほとほと涙を流してて、よっぽど不安な思いをさせてしまったんだと思う。  蹴りつけられたりした痛みを、もしかしたら銀花も感じてしまったのかも……そう思うとホント、申し訳ない。 「  ────がっ」  仁と義が来たからってほっとしていたオレ達の耳に、義の短い悲鳴が飛び込んできて、追いかけるように殴り飛ばされる音が響いて…… 「みち  」  義の方へと向き直ろうとした瞬間、オレ達の傍に仁が吹き飛ばされてきて…… 「っ!?」 「しのぶ⁉」  とっさに銀花を突き飛ばしたから薙ぎ払うようなαの蹴りは躊躇なくオレを蹴り上げた。   重い一撃は素人のそれじゃない!  体の軋むようなそれは明らかに怒りを込めたもので、到底オレが踏ん張って受け止められるようなものじゃなかった。 「ぃ っ!」  頭を庇った腕がミシ と嫌な音を立てる。  それは普段の生活では感じることのないような痛みで、思わず地面に転がりながらそこを押さえて蹲った。 「は っはは、なんだ、弱ぇの」  頭の傍に固そうな靴の爪先が来て、ザリザリとレンガの感触を確かめるように動かした後、なんの躊躇もなくそこに溜まった砂を蹴り上げる。  海風に吹かれて溜まった砂はそれなりの量で、突然顔に掛けられたそれが視界を覆った瞬間に異物が目に入る痛みにまた小さく声を上げてしまう。 「ぅ゛  ────っ」  ぐいっと襟首を掴まれて引きずられ、体が浮き上がるを感じて抵抗のために手を振り回す。  目に入った砂がごろごろとして痛みを訴え、瞼を開こうとしてもそれのせいでまともに見ることができない。 「てめぇだけは許さねぇからな、徹底的調教してチンポなしじゃいられない色狂いにしてやるよ」  足が地に着かない不安感にぎゅっと心臓を掴まれたような気がしたけれど、オレを引き摺るαに向かって「ふ 」と鼻で笑って見せた。

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