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お可愛いΩ お可哀想なα 60

「なにそのバカみたいなの、三流下っ端の捨てゼリフみたい」  掴み上げる手にぎゅっと力が籠り、雰囲気だけだけれどαの苛立ちを肌で感じる。  明らかな、怒り…… 「サルみたいに襲わないとオメガにも相手にされない雑魚だからこんなことするんだろ⁉」 「 は   ?」 「三人で掛からないと一人のオメガも満足させられないくらい貧弱、なんだよね?」 「こっ の  っ」  ぶるぶると震える腕は怒りを十二分にオレに伝えてくる。  聞き取れないような早口で悪態を吐くと、おもむろに投げつけるように腕を振り上げる動きを感じた。反射的に頭を庇うように両腕を動かしたけれど、木の幹に叩きつけるように投げられたため、ぐ と息が止まるような衝撃がして肺が跳ね上がった。 「っ  くっそうるせぇ!」  目はまだまともに開けることはできなかったけれど、ひゅっと空気を裂くような音でこちらに向けて拳か足が振り下ろされたのことに気づいてとっさに横に飛びのいた。  耳元を高速で何かが掠って行く音にぞわりと鳥肌が立つ。 「減らず口を聞けなくしてやる」  荒々しく枯れ葉を蹴散らして近づいてくる音だけを頼りに、どこに向かっているのかもわからないまま走り出す。  けれど、目が見えていても鬱蒼とした林の中は走りづらかったのに、碌に目が見えない状態でまともに動けるわけもなく……  どん と構えもないままに木にぶつかって、踏ん張ることもできないままに派手に地面に倒れ込んだ。 「は はは!」  一際きつい草の臭いに息が詰まりそうになりながら、後ろから聞こえて来た笑い声にどっと心臓が跳ね上がる。 「虫けらみたいに這いずって、いいザマだなぁ、オメガにお似合いだよ、お前らはそうやって地べた這いずって精液食いながら生きてればいいんだよっ」  何を勝手なことを……と言う言葉が喉に貼り付いて出てこない。  明らかにこちらに向けて放たれている殺気に、皮膚が粟立って体中が強張った。 「面だけが取り柄なんだろ?その顔ぐちゃぐちゃにしてやるよ、そうすればちょっとはアルファ様への尻尾の振り方も覚えるだろうよ」  こちらににじり寄る気配が……  命を尊重しない足音が…… 「オメガなんて、突っ込むアナのあるオモチャだろ?」  人としての尊厳など考えない声音が…… 「ふっざけんなぁぁぁぁっ」 「りっかぁぁっ!」  オレの怒鳴り声と銀花の叫び声はほぼ同時で…… 「 ────っ」  ちかりと視界に光が瞬いたのもその瞬間だった。  両目はまだズキズキと痛んで見えないのに、視界に広がった光景は涙に滲むことのない色鮮やかなもので……  ────オレが、オレを見ている。  ────足を振り上げるαの背中が見える。  ああ、コレ、銀花の視界だ!  その奇妙な感覚にびっくりする間なんてなかった。  とっさに指先に触れた石を掴んで力一杯αに向かって投げつける。

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