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お可愛いΩ お可哀想なα 61

「  ────あ゛っ」  αの眉間にまっすぐに入った小石は、小気味よいビシっと言う音を立ててからぽろりと足元に転がり落ちた。  ぐらりと傾いだ体はそのまま倒れるかと期待させたが、ぐっと踏みとどまるような姿勢を取ってふらりと揺れただけだった。  ……と、そのαに向かって銀花が渾身の跳び蹴りを放ち…… 「  ぅ゛ あああっ‼‼」  吹き飛んだαの体が枯れ葉の中を滑るように沈み、一瞬耳が痛くなるんじゃ?って思えるくらいの静寂が落ちて来た。  ぼたぼたと落ちる涙で枯れ葉がカサリと立てる音に押されるようにして顔を上げると、「りっか、りっか」と譫言のように呟きながら銀花がオレの傍にへたり込んだ。  涙で滲んでよく見えない視界の中でも、銀花の仄青く光る瞳が心配そうにこちらを見ているのがわかる。 「銀花……ナイスフォロー」 「ナイスファイトだよ、りっか」  目の痛みはまだとれないけれど、銀花が抱き寄せてくれたから少しはましになった気がした。  あの後、何故か寮に来ていたお父さんの車に乗せられて四人そろっておじいちゃん先生のとこに放り込まれて……  幸い、オレの目は点眼薬を貰うくらいだそうで、後は擦り傷打ち身……かな。  んで、仁は頭を縫って、義に至っては足の骨にひびが入っていたそうだ、ちなみに銀花は一人無傷で……オレに引きずられたのか泣きすぎたのか、少し目が赤くなってしまっているだけだった。  念のためにと四人部屋に一緒くたに放り込まれて、それぞれにベッドはあるはずなのに銀花は余程怖かったのかオレと寝るって言い張って…… 「……なんで睨むんだよ」 「べっつにー」 「べーつーにー」  同部屋の仁と義は銀花がオレのベッドで寝ているのが面白くないらしい。  まぁ、銀花が大の字で寝てるせいで、オレはパイプ椅子に座ってるわけなんだけどね。  一人すやすや眠っている銀花を見下ろして、睨まれているけれどそれでも皆無事だったことにほっと胸を撫で下ろす。  落ち着いてきて、今更な話、三人が来てくれなかったら……って思うとぞっとする。 「……仁、義、ありがとうね。来てくれて助かった」  素直にそう言うと、二人がぴっと飛び上がって、顔を見合わせたあとに少し照れたような顔をした。 「全然役に立たなかったけどな」 「もうちょっと強くならなきゃな」  正直、今回のこの惨状はオレが一人突っ走ったから起こったことだとは思うから、二人の怪我を見ていると申し訳なくなってくる。  自分の考えのなさと、力の無さを思い知った気がして、自然と頬がぷくっと膨れる。 「六華、俺達が怪我したのは俺達が弱いからだ、お前のせいじゃあない」 「そうだよー守る者が誰であれ、力不足がわかったんだからいい機会だったよ」 「でも……」 「それにお前が追いかけてなかったら、間に合わなかっただろ?」 「…………」  虎徹先生が駆け付けてくれた時間を考えれば……間に合ってはいなかったとは思う。

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