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お可愛いΩ お可哀想なα 62
シュンのような華奢なΩに対してαが三人がかりで……
きっと、抵抗なんてあって無いようなものだ。
「…………」
「今後の課題だな」
「だな。とりあえず目標は打倒六華だ」
「待って、なんでオレ⁉」
二人はちらちらと兄弟間でしかわからないアイコンタクトで会話してから、「「内緒」」ってそろって返事を返してくる。
「────内緒なのは構わないが、負かされた言い訳は考えておけよ?」
聞こえて来た声に二人の背筋がぴっと伸びる。
「お父さん!」
「全員の入院手続きが終わったぞ、お前らの親はもう少ししたら来るそうだ」
やれやれ……と言うように首を回すと、オレのベッドで寝ている銀花を見て苦笑した。
そして枕元の名札を入れ替えて、元銀花のベッドで眠るようにと促してくる。
そろりとそちらのベッドに座ると、傍らの椅子に腰かけて窺うようにオレを覗き込んでくる。
「 お父さん、心配かけて……ごめんなさい」
奥底まで見透かすような視線は、眼鏡を通しても和らぐことはなくて、オレは居心地の悪さを感じて顔を上げれないままもじもじと膝の上で指を弄った。
怒られるのはわかっている。
身の程もわきまえずに何をしているんだ と。
どうして教師にすべてを任せなかったのか と。
身を小さくしてその瞬間を待つけれど、聞こえてきたのは小さな安堵の溜め息だった。
「無事でよかったよ」
「っ ぅ、ホント ごめ 」
「六華が逃がした子は無事だったそうだ、よかったな」
「 っ、うん」
ぼた と手の甲に涙が落ちた。
泣いてしまって恥ずかしいなって思う前に、長い指がオレの頬にかかってもう一度窺うように覗き込んだ後、ぎゅっと抱き締めて来る。
「はぁー……よく頑張ったな」
「ん 」
ぎゅうっとオレを潰すんじゃないかってくらい力の籠った腕は痛かったけれど、それ以上にオレにお父さんがどれだけ心配したかを伝えて……
「オレ……オメガを守ることができて、ちょっとはアルファっぽかったかなぁ?」
「 っ」
ぐしゃ と大きな手が髪を掻き混ぜる。
「そんなことしなくとも、お前は立派なアルファだよ」
お父さんにそう言って貰えた瞬間、オレは思わず声を上げて泣き出しちゃっていた。
ガランとした病室を見て、荷物らしい荷物もないから手持無沙汰で退院のお迎えを待つ。
元々、入院とは言っても念のための入院だったから、もう次の日には退院で……仁達は少し前に迎えに来たおじさんに引きずられて、泣き叫びながら先に帰って行った。
今頃、どうして負けたのかをこんこんと問い詰められていることだろう。
銀花が見送りに行っているから、少しは緩衝材になればいいんだろうけど、
「きっと意味ないな」
そう呟いて、くるくるくる……と掌の上で白い石を弄ぶのをやめて視線を落とす。
手の中にすっぽり入るくらいのその石は、最後にαに投げつけた石で、他の石と違って白く綺麗だったから……と銀花が拾って来た物だ。
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