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お可愛いΩ お可哀想なα 64
反省して、謝りに来るってすごく勇気の必要なことができるって素敵だ、そして悪い所は悪いって認めて素直に謝れる子が、オレは好きだ。
小さくて、黒髪で、華奢で、守ってあげたくなって、笑顔が素敵で、優しい子だなって。
「気にしないで、だってオレはアルファだもん。シュンを守りたいって思ったから、守っただけなんだもん」
そう言うと、シュンはぱちんと飾りのように涙を溜めた目を瞬かせて……
「六華くんってアルファだったんだよね、ごめんね、僕ずっと勘違いしてて……」
「うぅん……言わなかったオレも悪いから」
緊張で冷たかった指先が、オレの手の中でちょっと熱を持ったような気がする。
トクトクと掌でシュンの指先の鼓動を感じながら、息を詰めて言葉を待つ。
「カッコよかったよ」
その言葉にぱあっと頬が赤くなって……
Ωの子にそんなことを言われたのって初めてじゃないかな?
カッコよかった なんて、初めてだ。
Ωでしょって決めつけてくる子達ばかりで、αって言っても信じてくれなかったり、鼻で笑われたりするばかりだったから、素直に受け止めてくれたシュンの言葉に心がぶわって浮き立つ感覚がして……
「あのっ オレと付き合ってくださいっ」
「えっ無理っ」
間髪入れずに返って来た言葉に思わずこちらも「えっ」と声が漏れる。
「えっっっと……」
「僕もっとアルファらしい人が好きだし、それに……自分より可愛い子に隣に立たれるのはちょっと……」
…………は?
「僕は無理だけど、六華くん可愛いっていろんなとこでファンクラブもあるし、そう言う人達から選んでみたらどうかな?僕は無理だけど、六華くんのこと気になってる子多いと思うよ、僕は無理だけど」
一度ならず、二度、三度、追撃のように言われてしまうともう頷くしかない。
「あ、うん……」
「僕を助けてくれた時、本当カッコ良かったし!大丈夫だよ!」
「何が?」って問い返すと、きっと更なる追撃が来るのは考えなくてもわかっちゃって……
小さな花束を受け取りながら、項垂れるしかできなかった。
朝起きてもまだずいぶんと昏くて、冬が近づいているんだなって思いながら目の前に光る青い瞳を覗き込む。
綺麗な綺麗な、湖のようなその瞳もこちらを見詰めるけれど……
「 ────っ……やっぱだめだぁ!」
「でもあの時、ホント銀花の視界で見えたんだって!」
ぷはぁ と二人で潜めていた息を盛大に吐き出し、部屋の床に倒れ込む。
あれから幾度か試してみたけれど、あの時のように銀花の視界を共有することはできなかった。
「えぇぇぇぇ……やっぱアレだよ!火事場のなんとかだよ!」
「えー……やっぱそうなのかなぁ、あの時は必死だったから良くわかんなくて、もう一回じっくり試してみたかったのにぃ」
手足をばたつかせて駄々をこねてみてもこればっかりはどうにもならない。
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