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お可愛いΩ お可哀想なα 65

 ぷうっと頬を膨らませて窓辺に置いた白い石に視線を投げていると、ノック音がしてドアが開いた。 「何やってんだ?朝ご飯できたぞ?」  二人して床に大の字に転がっているんだから、お父さんからしたら不思議にしか思えなかったんだろう。  今日の朝ご飯のメニューを尋ねながら台所に行き、それぞれに飲み物を注いでいる最中にふと首を捻る。 「そう言えば、あの日はどうして寮に来てたの?」  高校生にもなって親が来なければいけないことなんて滅多にないはずで……まぁ今回はたまたまそう言う事態だったから助かったけど、タイミングとしては良すぎだ。  お父さんは豆乳を注ぐ手を止め、「ああ 」と視線をちらりとずらす。  左横に視線が動くのは記憶の中の言葉を思い出している時だって、おじいちゃん先生が言ってたなぁなんて思い出していると、お父さんの眉間に微かに皺が寄った。 「セツが……」  そう言いながらお父さんの視線はゆっくりと右に動く。 「今度の外出で海の方に行ってみたいって言うから、その下見に行くついでに、先生に挨拶をしようと思って」  ぱち と瞬いて視線が戻る。 「お前達のことでだいぶ便宜を図ってもらっているからな」 「ふーん」  セツちゃんは、研究所でお父さんが世話をしているΩの子だ。  遠目にしか見たことないけど、金髪の小さな子で……お父さんは名前くらいしか教えてくれないから、きっとバース関係の事件で研究所にあるシェルターに保護されている子なんだと思う。  シェルターに保護されている子のことについては話せないって前から言われているし、右に動く視線は嘘を言っている証拠らしいから、深く聞いちゃいけないことなんだなって思うとそれを突っつく気は起きなかった。 「そうなんだ。それじゃー……お父さんはまた研究所の方にお泊りなんだね」 「いや、しばらくは家にいるよ」  ふんふん と食パンにピーナッツバターを塗りかけた手が思わず止まる。  しばらく家にいる なんて言葉、聞いたことがあったかな? 「うるさい仁達は当分こっちには来ないだろうし、親子水入らずもたまにはいいだろ」 「えっえ……でも、 」 「仕事の方はいいの?」 「ああ、最近は家の掃除も放り出してたからな、衣替えついでに少しまとめてやってしまおうかと」  その言葉に「!」ってきて、オレは急いで居住まいを正して「あのっ」って言葉を出した。

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