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お可愛いΩ お可哀想なα 66

 急に思い立って、勢いだけで喋り出したせいか思いの外大きい声に、お父さんと銀花だけじゃなく自分もびっくりだ。 「それならっ!服を突っ込んである部屋を片付けて……一人部屋が欲しい  ですっ!」  お父さんからしたら、銀花と仁達のストッパー役がいなくなっちゃうからいやかもしれないけど、でも、でも、でもっ!オレは一人部屋が欲しい! 「ああ、いいぞ」  てっきり反対されるって身構えてたからか、お父さんの言葉がよくわからなくて「は?」って聞き返す。 「じゃあ季節物以外の服は各自の部屋に保管するようにしないとだな。いや、いっそトランクルームでも借りてそっちに移すか」 「えええええっえっいいの⁉」 「いいも何も、着ない服が部屋にあったら狭いだろ?」  きょとん と言うけれど、オレが言いたいのはトランクルームの話じゃない。 「ちがっ ちが  一人部屋っ!いいの⁉」 「いいの? はこっちの台詞だぞ?もう大丈夫なんだな?」  お父さんの言葉にまた「は?」って言葉が漏れる。  オレ、さっきからこればっかり言っているような気がする。 「大丈夫って、なに?」 「なにって……ずっと二人部屋にしてたのは、お前がベッドの下におばけがいるって言いだしたからだろ?」 「ふぇ⁉」 「ああ!りっか小さい時言ってたよねー!『ベッドの下からおばけが来る』って。だからぼくがベッドの下なんだよね」  「⁉」となって飛び上がってみるもオレの記憶には一切そう言ったことは残ってなくて……  てっきり、お父さんが銀花と仁達が危ないことにならないようにしてるんだって思ってた。 「ベッド下のブギーマン……?」  思わずそんな言葉がポロリと漏れる。  意識したわけじゃない言葉なのに、なぜだか重く響くそのフレーズにぶるりと体を震わせた。 「…………」  特に変なことを言ったわけではないのに、お父さんは訝しむようにぎゅっと眉間に皺を寄せて……また、何かお父さんが怒るようなことを言っちゃったのかもしれない。  オレにとってはベッド下のおばけよりもそのことの方が重大だし、怖い。 「も、もう怖くないもん」 「そうか」 「怖いんだったらぼくが一緒に寝てあげるよ?」 「それ一人部屋の意味ないし」  病院でベッドを占領されたことを考えると、一緒に寝るなんて選択肢はオレにはなかった。  小さい時ならいざ知らず、にょきにょきにょきにょきと育った今じゃ、寝返りを打たれただけで掛布団は持って行かれるし、足を広げただけで蹴落とされてしまう。

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