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落ち穂拾い的な お可哀想なα達
ガリガリと動かしていたシャープペンの軸先が引っ掛かり、仁は苛立ちを隠さない表情でそれを投げ出した。
「あ゛ーっ」
「書けたー?」
「まだ」
むっとしているのを隠そうともしない声音に、義が苦笑を零して仁が先程まで書いていた原稿用紙をとりあげる。
数行書かれて放り出されたそれは「反省文」だ。
「第一やってもいない覗きでなんで反省文を書かなきゃいけないんだよっ!」
「だーよーねー!ホント納得できない」
納得は出来ないのだけれど、実際Ωの入浴時間に窓の下にいたのと、その入浴中の会話を知っているのだから……と言うことを突き出されてしまい。
二人でこうして反省文を書く羽目になっていると言うことだ。
「それに、覗くなら銀花のを覗くって」
「それな!」
二人でびしっと指をさし合うが、実際にそんなことをしようものなら銀花の父と自分達の父から半殺しを通り越した目に遭うのは間違いない。
運命の相手との間に立ちはだかる壁と谷はどこまでも高いし深い。
「いつか必ずっ」
「いつか絶対にっ」
ぐっと二人の拳に力が籠る。
「「一緒に風呂入るっ」」
突き上げて宣言するけれど……それが低そうで高いハードルなのを二人は良く知っていた。
『銀花とどうこうなりたいなら、オレを倒してからだ』
それを告げられた際の記憶を思い出しただけでも、二人はなんだ落ち着かない気分になって身を竦めなくてはならなかった。
銀花の父に刺された釘は存外深く重く、鋭く……
抑制剤を服用していても煮えるように湧き上がる衝動を押し留めるには、十分なほどの威嚇だった。
「はぁ」
「あれだよ、まずは打倒六華から行こう」
「んだな」
そう言うと仁は拳を作ってぐっぐっと力を込めて力こぶを確認する。
「俺、別に腕力がない方じゃないよなあ?」
「うん?うん」
αの父に一番似ている仁はその体型も似ているせいか、高校生にしては背も腕回りも破格のサイズなのは間違いない。体つきがΩの父に似ている義は少し羨ましく思いながら頷くと、それを見た仁はがっくりと肩を落とした。
「だよなぁ……」
でも……と言葉を続ける。
「六華を引き摺り上げるのができなかったんだよな」
そう言うと仁は面白くなさそうに目を細めた。
ネクタイを掴んで引きずり上げようとしたあの時、自分の方に僅かによろめかせるのが精いっぱいだった。それを思い出して仁は苦いものを食べてしまった時のように盛大に顔を顰めて見せる。
「それなりに、鍛えてきたつもりだったんだけどなぁ」
純粋な腕力と重さだけと言うなら、小さく華奢な六華を持ち上げることは容易だったが……
「まず打倒六華が難しそうだな」
「だな、あいつは師匠から教えることがないからっつって、『もういいよ』って言われたしな」
「まだまだって言われてる俺達じゃ、…………」
言葉を続けようとしてその不毛さに二人して肩を落とした。
END.
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