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落ち穂拾い的な 肝試し

「おおおおおお押すな!」 「押してないよー」 「俺が引っ付いてるだけだよ」 「それを押すって言うんだよ!」 「君ら、消臭スプレー構えて何してるのさ」 「お父さんが言ってたもん!消臭スプレーは全てを解決する!って」 「それ、お化けの話だろー?」 「効くって!」 「えー?効くかなぁ?」 「とりあえず、昼間に肝試しってどうよ?」  団子になってびくびくと歩いて行く三人の後ろから、犬の散歩をしている気分でぶらぶらとついて行く。  なかなか手入れの行き届かないグリーンベルトの公園は、少し奥まったところに入ったら確かにちょっと出そうな雰囲気ではある。  鬱蒼と木が茂っているせいか、昼でも薄暗くて視界が利かなくて……  ただ風が吹いただけって思うのに、なんだかビクッてなってしまう。 「ちょっ だめ!そこダメ!」 「大丈夫大丈夫」 「平気平気」 「ダメっあ、ちょ んん」 「こらそこ!どさくさに紛れておっぱい揉むんじゃない!」 「た、たすか……」 「怖くて引っ付いただけだよ」 「そうだそうだ」  絶対!お父さんにチクってやろう!って決心をした瞬間、頭上からガサガサガサって明らかにおかしい木の葉の擦れる音がして、追いかけるように「あ゛あ゛あ゛」って悲鳴みたいな声が右手の茂みから上がって…… 「「「ぎゃああああああっ」」」  悲鳴みたいな声よりも三人がハモって上げた声の方が大きくて、思わず耳を塞いでしゃがみこんだ。  ザカザカ……ドン!  って、オレと銀花達の間に何かが落ちて来て…… 「ふぇ⁉」  黒い、にょろりとしたものが視界に揺れる。  それの持ち主を目で追ったら、艶のある黒髪の間からぴょこんと綺麗な三角形の黒い耳が突き出ていて…… 「え、え、えっと……」  目に入ったそれを言葉にしようとする前に、茂みから飛び出してきた何かがそれにコートをかけて覆い隠してしまった。 「こら!クロ!ダメって言っただろ!」 「 ──、──!」  コートの下でもぞもぞと動くためか端から長くにょろりとしたものが覗いて…… 「あ、の   その人、耳が……」 「はっ!」  コートを押さえつけている青年はオレと、団子になって蹲っている三人を見ると真っ青になって、 「あああああああああのっこれはっ」 「 っ、────、」  声にならないような、そんな声を上げながらコートの下がもぞもぞと動いてひょこ と顔を覗かせる。美しい、月をそのまま閉じ込めたかのような黄色の丸い目がこちらを見詰めて、眩しそうに微かに細められた。  銀花達は何て言ってたっけな?  グリーンベルトに出る猫?  違う、化け猫!?  いや、これって……今、ニュースになってるやつだ!  思わずアッと声をあげそうになったオレに、青年が慌てて首を振る。 「これはっ」  青年の声に反応してピクリと反応する耳、滑らかに動く尻尾、でも、それ以外はオレ達と何ら変わりない……  ニュースではなんて言ってたかな?  人類の進化?  Ωの可能性?  倫理に反した、技術? 「違うんですっ!これはっ猫耳のカチューシャで!尻尾はっ尻尾は……さ、挿しこんでて…………そう!そう言うプレイなんですっ!」  真っ赤な顔で、今にも卒倒するんじゃないかって声で叫ぶものだから、不憫になって思わず「あ、はい」って返事をすると、青年は更に顔を真っ赤にして、引きずるようにして茂みの中へ猫人間を引き摺って行ってしまった。 「あれ が、  」  行きすぎたΩ研究が生み出したものだとニュースになったのは少し前で、怪しい合成じゃないかって写真は見たことがあったけれど、実物を見たのは初めてだった。 「りりりりりりっか!何っ何だった!?」 「おばけ!ドスンって言った!」 「むりっむりっ呪われる!」  何しにここに来たんだよって思いつつ、とりあえず構えている消臭剤を押し退けて三人を立たせる。 「ほら、立ってー!」 「あ゛────っ目ぇ開けたら絶対おばけいる!」 「ぜったい!目の前でばぁってする!」 「足掴まれてるって絶対ぃぃぃぃ!」 「いや、もう行っちゃったからさ」  訳のわからない幽霊って言うなら滅茶苦茶怖いし、きっと一緒に腰を抜かしてたかもだけど、さっきのは明らかに実態のある人だった。  なら、怯える必要なんてまったくない!  殴れるってそれだけで安心だよね! 「ほら目を開けて―!」  ぐいぐいと三人を押しながらとりあえずその場から歩き出した。 END.

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