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落ち穂拾い的な 噛む!そして噛む!
「あ゛ぁ゛~」と言う泣き声が聞こえて慌ててそちらを見ると、仁が右頬に、義が左頬に噛みついている。
幸いまだ歯が生えているわけではなかったけれど、噛むように吸い付かれて銀花はただただ泣き喚くばかりだった。
ぽよぽよとした頬が吸引力に、むにーっと伸びていく。
「ちょ おい!止めろ!」
「う゛ぇ゛ぇ゛」
小さな手を必死に伸ばして、二人の暴行者から逃げようと父に助けを求める姿は、まだ歯も碌に生えていない年ながら庇護してくれる相手をきちんと理解しているように見えた。
「ごめっ こら!離しなさい!」
「あああああっ!」
「う゛あああっ!」
やだやだと力一杯に腕を振り回す二人をなんとか引き離し、ふぅ と息を吐こうとした瞬間、思わぬ速さのハイハイでにじり寄った仁と義がまた銀花の足に食らいつく。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ」
助けて とばかりに縋りつく銀花を抱え上げ、足元で獲物を返せとばかりに一生懸命手を伸ばしている仁と義を見下ろす。
「ああーっほっぺ大丈夫?」
「少し赤くなってるだけだな」
「二人が吸い付くってことは、こっちが銀花くん?」
「ああ。アホ毛が立ってるのが六華、下がってるのが銀花だ」
「ごめ 言われてもわかんない」
一卵性だけあってそっくりなこの双子に、周りは名前を呼ぶ度に確認を取らなくてはいけなかった。
見分け方を教えてはくれるも、風が吹けばその特徴は消えてしまうから、結局見分けはつかない。
「でも不思議だよねー、銀花くんにだけ噛みつくんだから」
「 ああ」
「そんな不機嫌な顔しないでよ」
「傷が残ったら……シバく」
「ちょちょちょ まだ赤ちゃんだからっ」
「躾は早い方がいいだろ」
「目が怖いよ」
「本気だからな」
「もう」と呆れかえって一人で機嫌よく遊んでいる六華の方へと視線を向ける。
「不思議だねぇ、六華くんには見向きもしないんだから」
「ああ」
「あれかな?実は運命の相手だったりして!」
あはは!と軽快な笑いに「冗談はよしてくれ」と渋い声で反論をするけれど……数年後、それが冗談ではなくなったりする。
END.
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