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永遠

ぽかぽかと心地良い温もりに包まれ目を覚ました風来は、カーテンからの木漏れ日に目をしばたたかせる。 首に感じるくすぐったい風に、寝返りを打って確認しようとしたが動かない。 誰かに背後(うしろ)から抱き締められている。 首だけぐるりと後ろに回せば、風来の口から溜め息が漏れる。 柔らかな朝日にさらされた、東洋人とは明らかに違う陰影が際立つ。 「……アル」 風来が思わず名を呼べば、アルバンの睫毛が震えた。 消えそうな微かな声も、風来の声は聞き逃さないようだ。 「ぉはよう……ふうら」 寝起きのゆったりしたアルバンの笑みに、急に恥ずかしくなった風来が目線を逸らすと、彼の二の腕に三角の赤い痣を見つけた。 風来は何故かその痣が気になり、するりと指先で撫でた。 「こんなとこに、アザ、あったんだ……」 アルバンは痣を撫でる風来の指を自身の手で包み、くすぐったそうに笑う。 「この痣は、俺のルーツなんだ」 風来が目線を戻せば、アルバンは遠くに想いを馳せているようだった。 「アル」 風来は徐にアルバンを呼ぶと、彼の痣に口づけを落とした。 まるで、何かを誓うように。 「ふ、うら??」 突然の風来の行動に、アルバンは目を見開いた。 「何となく、キスしたくなった」 痣から唇を離した風来は、照れくさそうにはにかんだ。 「何となく、愛おしくて」 風来の言葉に、アルバンは回していた腕に力を込める。 「俺は、風来が、愛おしいよ……」 アルバンは瞳を強く閉じ、許しをこうかのように囁いた。 「風来が、愛おしくて、愛おしくて……。もう、離すことができそうにないんだ」 アルバンの強い思いは束縛を示唆させたが、風来はそのことに全く恐怖を感じなかった。 むしろ……。 「ゲボルゲンハイト」 「えっ」 体の向きを入れ替え、今度はアルバンの口にキスをした風来。 「俺の今の気持ち。発音、おかしかった?」 天使を見紛う風来に、アルバンは心の中でため息をつく。 「ううん、おかしくないよ」 アルバンもお返しにとばかりに風来にキスをする。 「Geborgenheit」

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