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Ⅰ フリュードリヒ・ヴィルヘルム⑦
「閣下、ご検分を!」
「いい」
「そんな事を仰らず」
「いい」
「是非!」
「いいっつったらいい!」
本能が警告する。
絨毯を決して開けてはならないと。
「絨毯は倉庫に……宝物庫に運べ」
「閣下ッ」
「兄上のお中元だ。粗相があってはならんぞ」
「はっ」
ザッ
靴音が鳴り、部下達が敬礼する。
「使者の者は謁見の間で待つように。すぐに兄上への礼状をしたためる」
「……閣下」
「閣下……」
「……閣下」
どうした?
お前達。わらわらと。
敬礼は?
「閣下!」
振り返ってはならない。
だが。
呼ばれたら振り返るのは上官の責務だ。
もごん!!
(今、絨毯が……)
跳び跳ねた★
それも盛大に。
目の錯覚……
(じゃない!!)
むぉごーんッ!!
見ろ。床から離れた絨毯が、華麗に着地したぞ。
ザッ
俺が銃口を構えると同時に、背後で靴音が一斉に鳴った。
配下の照準が絨毯を捕らえる。
「待て!」
今にも発砲しようとする拳銃を、後ろ手に制す。
ふごん。
ごろんごろんごろん~~~
絨毯が寝そべった次の瞬間。
勝手に転がりだしたー!!
(なんなのだッ、一体)
この不気味な絨毯は!!
ごろんごろん、ごろん。
「絨毯が止まった」
真紅の花びらがはたと舞う。
麗しき芳香に一瞬、意識が酔う……
薔薇の海に横たわる、その影
形
彼はまさしく、人だ。
絨毯の簀巻 きから現れたのは…………
「撃つなァッ!」
大怒号が静寂を打つ。
背後の部下を無我夢中で制した。
絨毯の簀巻きから現れた、その人…………
貴方は!!
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