6 / 13

Ⅰ フリュードリヒ・ヴィルヘルム⑥

真心を込めて大切に大切に使うと、物には魂が宿ると云う。 極東の島国の思想だ。 ならば、この絨毯にも魂が! (待て待て!) 使うどころか触れてもいないぞ。 まだ使ってもいない絨毯に魂が宿る訳ない。 そもそも、絨毯は人の足に踏まれるさだめ。 魂が宿ったら、それは余程なMな魂だ。 じー 絨毯を見定めるが、美しい花が風にそよいだりはしない。紅い薔薇も青い薔薇も刺繍である。 じー ……… ……… ……… ドキンッ なんだ、この胸騒ぎは。 絨毯に鼓動を射貫かれたような? じー そうだよな。 ……… ……… ……… 絨毯が見つめ返す訳がない。 (俺の見間違いだ) 新品の絨毯に魂が宿る筈ない。 目の前にあるこれは、職人の匠が織り成す至高の技にして、只の絨毯だ。 もご。 「絨毯動いた!」

ともだちにシェアしよう!