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第1話
俺の弟はとても可愛い、天使と言っても間違いない。
一つしか歳は変わらないが「にいたん、にいたん」と後ろを着いてくる弟がとにかく可愛いんだ。
娘が欲しかった母は弟をお姫様のように可愛い服で着飾った。
男だったら女の子の服や、レースをふんだんに使った服を嫌がるものだが母の趣味に付き合っていたからか弟も可愛いもの好きになっていった。
弟はお姫様ならお姫様を守る騎士になると子供ながらに思っていた。
家にあるアルバムは俺の写真より弟の写真が圧倒的に多かった。
俺も写真を撮りまくっていたからアルバムの半分は俺が撮ったものだ。
歳が近いからか、不思議と弟を妬んだりする事はなかった。
こんなにくまのぬいぐるみを抱き寄せる姿が似合う男がいるのだろうか、いや俺は知らない!近所に住んでる女の子よりも弟が一番可愛い!
弟のためなら命だって惜しくない、俺は今も昔も弟の騎士だから…
小学生の頃、弟はいじめられていた…少しだけ普通と違うだけなのに親の仇のように子供は責める。
両目の色が違うだけで、皆と変わらないのに「化け物」だとクラスメイトの男達に押されて尻餅をついていた。
涙を潤ませて、でも泣くまいと我慢する痛々しい姿に怒りが湧き上がる。
「テメェ!俺の弟に何してやがる!!」
「げっ、歩夢 の兄ちゃんだ!」
「逃げろっ!」
「ふざけんな!待てこのやろー!!」
俺がランドセルを振り回して走ると、弟の歩夢をいじめていた悪ガキ達は一目散に逃げていった。
どんな理由であっても歩夢をいじめるなんて俺が絶対に許さない!
悪ガキを追いかけ回していたら、歩夢が俺を呼ぶ声が聞こえて足を止めた。
その隙に悪ガキ達は居なくなってしまった、歩夢が呼んでるから俺の優先順位は歩夢だからすぐに歩夢のところに向かった。
ハンカチをポケットから取り出して歩夢の涙を拭う。
すると歩夢が俺に抱きついてきて、静かに泣いていた。
頭と背中を撫でて歩夢の涙が止まるまで慰めていた。
「やっぱり歩夢は一番可愛いなぁ」
「まぁたそれか、相変わらずだなぁ」
友人は呆れながら歩夢の写真をホーム画面にしているスマホを眺めていた。
画面には俺が中学の卒業式の時に家族と写真を撮った時に弟のところだけアップにした写真が映っている。
可愛い顔をして笑う姿に癒されるが、同じ学校にいない事がとても寂しい。
一歳違いだから弟は今中学生で、来年から同じ学校に通うとはいえ一日の半分も会えないんて人生を無駄にしている。
あぁ、心配で心配で胃に穴が開きそうなほど毎日歩夢を想っている。
いじめの心配をしているんじゃない、歩夢は中学生になった時にカラーコンタクトで両目を隠しているから化け物だといじめられる事はない。
わざわざ誰も歩夢を知らない電車通学でしか行けない遠くの中学にしたんだ、俺も歩夢のためなら何処へでも行ける!
いじめられるとしたら、歩夢の可愛さに嫉妬した奴くらいだが…それも心配で腹が痛くなってきた。
歩夢はとにかくモテる、しかも女の子ではなく男から…
気持ちは分かるけど、俺の歩夢を変な目で見るなと怒りが湧き上がる。
天使で俺の女神なんだぞ!見守るくらいにしてほしいものだ。
「だんだんブラコンが気持ち悪くなっているな」
「…うるさいな、妄想は自由だろ」
「お前の大好きな弟くんの恋愛を邪魔ばかりしてるといつか嫌われるぞ」
「……嫌っ!?」
歩夢が俺を…?あんなに俺に好いてくれた歩夢が……頭が真っ白になる。
実際歩夢に言い寄る野郎共がどうにかしたわけではないから俺も無害の奴になにかするわけにもいかない、あまりにもしつこくて歩夢が困っていたら俺が守るけど…
友人が冗談交じりで「そんなに弟が好きなら弟と付き合えば?」と笑っていた。
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