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05
少しだけ昔話をしよう。
学生の頃だったかね。
あの時は確かタツキとヤろうとした時に、ショーゴがたまたま訪ねてきたのだ。
タツキとは中学の頃からの付き合いで、その時にはもう体の関係もあった。
だから俺と出会ってからイメチェンしたタツキとベッドで重なるツーショットは、ショーゴの目には遊び慣れた男を引っ掛けたように見えたらしい。
ショーゴは俺の感情解釈違いが甚だしいので、そいつは誰で、どうして見せつけたんだ、と激昴して移り気を責めた。
いやいや。
見せつけたつもりなんかねぇし、そもそも俺はお前のものじゃねぇよ。
ずいぶん前のことだからまだ俺に夢を見ていて、ちょこちょこアイツは俺のカノジョ面していた。男だけど。
ショーゴはね、根がめんどくさい。
従順に見えてワガママだ。
まぁそんな性格で生きてきたから当然だけど、それにしたって泣き虫で構ってちゃんで夢見がちである。
だから何度も何度も教えてやって、適切なスタンスを理解させ、頭も体も、それなりに愉快なように変えてやった。
その夢見がちなメルヘン野郎が逃げ出さずに今も残っているのは、予想外だけどさ。
あの時のアレは、立ち尽くすショーゴが混ざりたがってるのかと思ったから、3Pに誘っただけの話。
目の前でタツキとヤり始めたのにまだ逃げねぇとか、それぐらいしかねぇじゃん?
ショーゴよりずっと従順で理解のあるタツキは、俺がショーゴを誘っても文句一つ言わずに乱交した。誰と何人で寝ても毎回そうなんだよ。いい子だからさ、タツキは。
そして俺はいつも、嫌ならやめれば? 帰っていーよ? と初めに言ってあげる。
ほーらどれだけ記憶さらっても合意じゃね? 俺は強姦なんてしねぇのよ。
いつでも鍵は開けっ放し。
出入り自由の清く正しいカンケイ。
「俺ってやっぱ良心的だよね。鬼畜でもサドでもなんでもねーよ。なんかそれっぽくしか優しくできねーから逆に走ってるだけ」
「まぁ裏表はないけど素でそれなのが咲だもんな。ハハハ」
うーんと思考を過去へトリップさせていた俺が弁明すると、その逆走の餌食になってばかりのキョースケは慣れているのでため息混じりにハハハと笑った。
勝手に解釈して勝手に納得。
ちょっと先生みたいなとこあるよなあ、キョースケ。キョースケせんせ。
否定や肯定をするほど自分に興味がないので返事の代わりに肩をドン、と当てる。
キョースケはよく動くせいで体温が高いので、くっつくとなかなかいい湯たんぽになるのだ。
だけどその湯たんぽは、最近まだら柄に模様替えした。
肘をついて覗き込むように視線を向ける先には、打撲痕がスタンプのごとく散りばめられた四肢がある。
日に焼けた褐色の肌では目立たないが、俺の目ざといお目目はすぐに見つけてしまった。青あざ。火傷。ちょっと黄色い。
似合ってっけど、俺の好みじゃないんだよね。
痛そうだとかなぜそうなったのかだとか特にそう言った感想は抱かないけれど、好みの仕様ではないので、金を払った身としてはカスタムに問題がある気分だ。
ぼう、と見つめる俺の視線に気づいたキョースケは苦笑し、女のように両腕で自分の体を抱きしめた。
「あー傷モノ買わせてごめんな。咲にはあんま、見られたくないんだけどなぁ……」
「カレシちゃんっしょ? イー趣味してんね、俺の好みじゃねぇけど。うふふ」
「ン……」
にんまり笑って左肩の青痣をつつく。
バカは聞き心地のいい低い声を微かに漏らし、穏やかな色を持つ目を伏せた。
「……慣れたからな」
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