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13(side今日助)※
「ァ…ン……なんで、…っ…あ……」
「ノリ? てか我慢すんなし。俺声は我慢しないほうが好みって言わなかったっけ?」
「ばっ、でもいつも……っん……ぅ、く……っ」
背骨の凹みを親指で強く指圧しながら、ゆっくりと内臓を長大な怒張で擦られる。
俺の好きなポイントを、しつこいくらいに、優しく。
もしよかったら、と連絡を取れば、咲は暇だからいーよ、と気だるげにやってきて、眠そうな顔で俺を抱いてくれた。
これは普段と同じ。
咲は気が向けば、たいていなんでも「いーよ」と許容する。
だけどそのあと。
いつも通りに好きなように抱かれるのかと思ったが、今──俺はなぜか酷く優しく、抱かれている。
うつ伏せに尻だけを上げた犯しやすい体勢で腰を掴まれ、緩慢な抽挿を繰り返してはゴツッゴツッと何度も深く穿つ。
時折強張った身体をほぐすように勃起したモノを手で慰められ、俺は喉奥から桃色の吐息を吐き出す。
こんな抱き方、今までされたことがなかった。気持ちいいだけのセックス。
起き上がることは許させれず、奉仕だってさせてもらえない。
痛みのないように腰が痺れるほど入口を指で解され、骨ばっているが白く長い咲の指が俺の中を丁寧にほじくる。
バラバラに動く四本の指を呑み込ませながら親指で会陰をグズグズに潰されると、開きっぱなしの口端から唾液がこぼれて、恥ずかしさから汗の滲む額を枕に押しつけた。
もどかしいくらい拡げられ、俺の先走りでシーツに水溜まりができる頃。
待ち望んだ怒張がむず痒いくらい慎重にズプ、ズズ、と挿入されると、露を滲ませる肉襞が待ちわびたとばかりに貪欲に絡みついた。
いつもなら、雑にエグる。
挿れたあとも気ままに俺を辱める言葉を吐き、快感に溺れるとチクリとトゲを刺す。それすらもない。
ただただ甘やかな快感に戸惑い、漏れ出す甘ったるい嬌声が恥ずかしくて、体の火照りを困惑で塗りつぶす。
そうすると咲は、不服そうに肩甲骨の間の皮膚を爪で詰った。
声を我慢するな、という言葉の理由がご近所さんへの嫌がらせだとは、俺も他の咲の相手たちも知らないことだが。
「さ、咲……っいい……もういいから、好きなことシて、ふ……ンンッ……ッぁ、俺はいいから……っ」
「オマエうるせーなぁ……ケツ犯されながら揉まれてるだけで役立たずチ✕コぐちょぐちょにしてるくせになに言ってんの? 黙ってイかされときな? ほら」
「ぁあっ……!」
ズブッ、と角度をつけて深い奥を突き上げられ中のしこりが押しつぶされ、悲鳴じみた喘ぎ声をあげてしまった。
なすりつけるように突っ込まれたかと思うと、抜ける寸前までズルルル……ッと引かれ、舌の先から直腸の行き止まりまで痺れるほど粟立つ。
ずっとその繰り返しだ。
静かな室内に腰を打付ける破裂音と、俺の声、ヌメリを帯びた水音が空回る。
「ぁッ…咲、うッ…うぅ……ッ」
たまらなくて、足先を丸く引き絞った。内腿がピクピクと痙攣している。
弾けそうなほど昂っていた性器が、ドプッ、とシーツに精を迸らせた。
丸く張った先端がヒクつき、括約筋が引き締まると共に陰嚢が収縮する。
俺がイッても咲は律動を止めない。
イキ続ける俺の体をトン、トン、と揺さぶり続けるからちっとも終わらず、精液が出ていなくても何度もイッていた。
「ぁ、あ……ッ…ぁあ……ッ」
「ふ。なんでただ抱かれてるだけってのができねーの? キョースケ」
「そんなこと言われ、ても……っ」
掴みどころのない、なんでもないような毒味のある語気。
責めるような口調で、されど穏やかな咲らしくないつまらなさそうなセックス。
だって俺はこんな抱かれ方知らない。
俺は男娼で、客の望むことをしてきた。
おかしいことはわかっているのに、頭に靄がかかって思考が停止させられる。
ただの気持ちいいセックス。
達したばかりの陰茎が芯を持ち、再度鎌首をもたげ始めた。
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