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11(side蛇月)※微
「翔瑚、慰めてェ……? オレのこと咲だと思って抱いてイイからよォ。んま、オレなんかより咲のがズーッと神々しいけどな?」
「ひ、酷いことは俺も大概されているっ! 今日は俺が誘いをかけたからノってくれただけでっ……」
「でも咲のコト抱いてみてェんだろ? 一緒にヤろうゼ? 翔瑚」
「ヤらないっ……! そもそも蛇月とかぶってるって知らなか……っ、んっ」
「は……黙んねェと噛むぞォ?」
文句ばかり並び立てて焦り散らす翔瑚がうるさいから、容赦なく無防備な急所をべろりと舐めてやると、翔瑚は目玉をひん剥いて黙りこくった。
代わりに痛いぐらい俺の髪をわし掴んで、引き剥がそうと力を入れる翔瑚。
まぁイイゼ。暴れると噛むからな。
たぶんイテェよ? 俺はちょっとキツめに歯をたてられただけで痛かった。
咲は俺が怯えると面白がるから、いつも怖いことをされる。
たぶん誰よりも無理強いされている。ある意味特別だって思えば、ヘーキ。
「ぅん、ン、む……」
「く、っそ……っ」
たっぷり唾液をまぶしてじゅぷ、とわざと音を立てて深く呑み込み、ゆっくりと頭を上下に動かした。
舌を使って先端のくぼみを刺激しながら、痛くない程度にジュルリと吸いつく。
竿は指で輪っかを作って根元からヌルヌル絞り、上半分は何度も口の中で扱く。
咲のモノをしゃぶるのは、俺が一番うまいと言われていた。俺が一番あらゆる咲のエロ調教を受けているので当然だ。
翔瑚のモノをしゃぶりながら咲が喜ぶさまを想像して丁寧に奉仕する。
(けど流石に即完勃ちはしねェな……)
うまいと自負する俺のおしゃぶりを受けても、口の中の肉棒は軽く勃起するだけでノリノリとは言えなかった。
まだ咥えて間もないせいでもある。
本気出してヤればイかせてやるのに。
それに生粋のゲイじゃない翔瑚は、咲にしか抱かれたことがない。
咲の命令や咲本人がいる状況じゃないと男単体には自主的に興奮しない上に、変にセックスに夢を見ているから、性欲処理テンションの俺に懐疑的なのだろう。
チェッ、ロマンチスト。
俺は咲以外ともヤることに慣れているので、脳内変換は余裕だ。
逆らいたくない。従いたい。褒めてほしい。
だけど知らない男より咲とヤリたいから防衛本能が仕事をして、俺の脳みそはいつでも咲を再放送できる。
翔瑚はチョット乙女すぎンだよ。
咲は弁えていてノリのイイ変態が相手にしやすくてスキなんだから、そうじゃねぇとダメだろ?
咲以外にその気にはなりたくないと男の本能を否定する目が、ムカつく。
未だに毛根から根こそぎ持っていきそうな力で俺の頭をひき剥がそうと震えながら無言の抵抗をする翔瑚に、呆れ果て内ももに軽く噛みついてやった。
「いっ、ぅ」
翔瑚はパッと片手で口元を押さえ、くぅんとでも鳴きそうな顔で俺を見てくる。
ダメ、許さねぇ。
上目遣いに目線を上げて唇を尖らせた。
「翔瑚ォ、オレだって別に、欲求不満じゃネェなら咲以外とセックスしようなんて思わねェよ? 相手いるほうが咲と仮想セックスしやすいし、オレはこうしなきゃってダケ」
「いや、しないといけないことはないと思うんだが……っ」
「ま、嫌なら勃ててくれればイイから、な? お前も楽しめよォ。オレ、従順なのは咲にだけだからサ……翔瑚の言葉は、聞いてやれねェなァ……」
「あのな、俺は別にゲイじゃないんだ……! 合意でもなく男に舐められて勃起できるほど神経図太くもないんだぞ……!」
「アーアーウッセェ」
遠回しに俺の神経が図太いと言っていることに、たぶん本人は気づいていない。
翔瑚はわりと無自覚に失礼だぜ。
俺は一物を掴んだままため息を吐く。
咲はこんなこと言わないしこんな態度も取らないしこんなに取り乱さない。
これじゃあ咲の代役をさせられない。
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