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10(side蛇月)※微
俺が待っていると知っているのに翔瑚に食事に誘われて構わないと言ったってコトは、つまり、俺をキャンセルってコトだろ?
俺と遊んで翔瑚とゴハンしたら、深夜になっちゃうモンな。
時間は有限で咲は一人しかいない。
俺はきまりが悪くてしょげかえっていたが、その話を聞いて、少し唖然として、それから悔しさと寂しさを感じてきゅっと眉間にシワが寄った。
劣等感と独占欲が燃えないわけない。
寂しくてしていた自慰をイク寸前に邪魔された挙句にそんな話を聞いたんだ。
俺は、ウー、と唸ってじっとりと濁った目で翔瑚を睨みつける。
「メシ……咲、オレは誘ってくんなかったゼ。六時間ソロ待機だモン」
「ろくじ、……当たりが強いのはいつものこと、か?」
「咲は悪気ねェし、基本オレらにはあんま優しくシネーしなァ……」
「まぁ、そうだな……セフレだからな」
咲との記憶を思い出しているんだろう翔瑚が、犬のように甘い目をしてクーンと咲恋しそうに肩を落とした。
けどダメだ。
ちょっと羨ましいから、翔瑚にはオレを慰めてもらわねぇと。
ちょいちょいと指先で呼ぶと、犬系な翔瑚は乱れた服装を晒しっぱなしのオレから目を逸らしつつも、特に警戒せず歩み寄った。
「どうした? ッ、ん?」
手が届く範囲に来ると、グイッと臙脂のネクタイを引っ張る。
驚いたところで肩を背中側から押し、翔瑚をベッドに押し倒した。
ごめんな? オレ咲に群がる虫を潰すために鍛えてるし昔ヤンキーやってたから、喧嘩慣れしてンだぜ。
無防備なワンコ一匹。
余裕でマウント取れるんだよ。
ぽかん、と俺を見上げる黒曜石のように澄んだ翔瑚の瞳。
そういえば前に咲が美味しそうって言って俺を犯しながら、俺に咥えられて泣きそうな翔瑚の目を舐めてたな。
──翔瑚、イイなァ……咲は翔瑚がお気に入りなのかなァ……。
「ったつ、っ、ぅっ」
「ん、ん? 無味ィ。ウゥー……」
ペロンと舐めてみると、別にこれといってなんの味もしなかった。
普通の目の味。分け隔ても際限もないのが咲だから、お気に入りなんて疑惑があると俺の心はささくれ立つ。
咲に人間の好き嫌いはない。
簡単に見えて難しい〝誰に対しても同じスタンス〟ということを素でやっている。
だから同じ男にドロ沼の恋をしていて、俺と翔瑚は険悪ではなく、同じ穴のムジナでいるというのに。
「ちゃんと底ナシじゃなきゃ、引きずり込むゼ……?」
「ちょっと、待っ……!」
困惑する翔瑚を尻目に、両足を押さえつけてベルトで押えられたシャツをひっぱり出してはだけさせる。
カチャカチャとベルトを弄って引き抜いてやると、翔瑚はようやく抵抗を開始した。遅いけどなァ。もうだいぶはだけてる。
「蛇月ッ、ば、なんのつもりだ……ッ?」
「オレ実は、翔瑚が来た時イク寸前でさァ。もうナカが咲を恋しがってたまんねェんだ。翔瑚ならできるだろ? 咲っぽく抱けよォ」
「なっ、なんでだ! なんでそう、止めろっ下着を下げるなっ……!」
「だってズルいモン。オレはホント酷いことしかされてねェのに他はなん、……マーなんでもイイよなァ」
「よくない!」
バタバタと暴れる翔瑚だが、筋トレだけの素人が自分より大きい男にマウントを取られて覆すのは難しい。
イコール格闘技に精通しているようにはとても見えない翔瑚はこの時点で負け確定なわけで、剥き出しの陰茎を握られ、息を詰めた。
べー。咲のお気に入り度は負けてっかもだけど、ケンカとエロ度は圧勝だな。
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