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09(side蛇月)※微

 好き。大好き。愛してる。咲、アイシテル。咲はずっと、俺のカミサマ。  本人がいたら鼻で笑って全否定されるようなセリフ。  締まりの悪い口の端からトロリと唾液が漏れ、シーツを濡らす。  パンパンに膨れた肉棒からも涎が溢れて、下着の中がぐちゃぐちゃだ。  ゆら、ゆら、と腰が揺れる。  欲求不満の感情のまま、内壁をひっかく指にあさましく襞が絡みつく。  足りねェよ、咲、ちっとも足りねェ、中が寂しい……早く……ッ! 『なぁタツキ。欲しがられるとあげたくなくなんの、なんでだと思う?』 「はっ……わかンね、っ足りないぃ……っ」 『あーうるせぇなー。じゃあさっさとイッて考えてよ。ほらイけ。指で中イキしろ』 「くひ、っい、ぁ……っあっ…もっとっ……あっ…咲っ…あっ……っ」  想像上の咲が俺を焦らしながらぐちぐちと中を抉ってくれて、興奮する。  イッて答えればゴホウビをくれる。  でも実際は挿入してくれるものがなくて、指もこれ以上奥には届かない。  早く早くと靄がかかった思考回路に拍車がかかって、他人のベッドでオ‪✕‬ニーをしてイキたいと本気で思っている羞恥心がどんどん薄らいでいった。  今ならどんなプレイでも受け入れる。  なにしてもいいって言うぜ。  ホントの咲が帰ってきてもかまわねぇ。  見て、咲。俺を見て。  発情して止まんないメス猫の俺を見て。  いい子だねタツキ、って、桃色の薄い唇で笑ってなでて、咲。  甘い声をか細く吐き出しながら手を止めることなく、帰ってきた咲にたっぷりイジメられる妄想で本気のヒトリアソビをする。  でも流石に── 「咲、いるか?」 「ンァ…っァ、すき…っ咲、っ……っ」 「っ!?」 「ぁ、ン……? あっ!?」  ──家主じゃない人に見られるとは、思わなかった。  なんか俺、最近他人に痴態を見られてばっかりのような気がする。前世でとんでもない大罪でも犯したのかな。  今なら羞恥を抱えたまま死んで詫びれるから、ひとまず俺を殺してくれ。 「「…………」」  バチコーンと目が合っている。  お互いに時が止まったかのように目を逸らせず、言葉を失う。  アンアンうるさく喘いでいたせいで玄関の開閉音なんて一切聞こえていなかった。  足音したか? 防音仕事しすぎ。  んで忘れてた。咲の部屋はオートロック(笑)なんだった。ウェルカム咲野さんのザルセキュリティ舐めてたぜ。  もう少しでイケそうなほど昂っていたのに、全身が発火しそうなくらい真っ赤に染まる俺は、そろりそろりと穴から指を抜いてそーっとベッドから起き上がる。  相手もそーっと抜き足差し足の足運びで部屋の中に入り、その相変わらず硬派なナリの端正な顔立ちを俯かせる。  何度か交流はある。好き好んで痴態を見せたいわけじゃないが。  そして相手は真っ黒な髪を揺らし、未だ身体の熱を持て余して身じろぐ俺に、気遣い満点の一言目を発した。 「……すまん、蛇月」 「ァ、ヤ……ゴメン、翔瑚……ウン……」  お互い赤面しながら謝り合う状況。  ナニコレ。俺やっぱ今日死ぬのか。死ぬ前に咲に会いたい。咲に殺されたい。  翔瑚は完全にオフだった俺と違い、スーツ姿だった。  仕事帰りに寄ったか、俺と同じくメッセージが送られてなんやかんやで部屋に来たのか、なんにせよタイミングは最悪だ。  翔瑚とは出会いから、エロの現場で鉢合わせてばかりである。 「ォレ……その、咲を待っててあの、に、匂いが、それで……まぁ……」 「ぁ……俺は、咲が突然変な質問してきて、今日なら暇なのかと思って、食事の誘いをかけたら、いつ帰るかわからないけれどいいなら勝手に部屋で待ってなって……」 「ぇ、あ……クソ、……、ウゥ」  バツが悪そうに眉を下げる翔瑚。  でもその話は、ズルい話だ。

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