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03
スマホを取り出しつつショーゴの泣き顔を引き合いに出すと、ウサトは素早く頭を下げてきた。ちょろい。
なにがそんなに嫌なんだか。
泣き虫ショーゴはウサトの努力も実らず、いつもちょっといじめただけでぴーぴー泣いてんのに。
会わないと泣くし、会っても泣くし、ショーゴのデフォルトが泣き顔だ。
俺は気まぐれにショーゴの泣き顔が見たくなってトットッとスマホを弄り、適当な画像をチョイス。
それをそのままウサトに見せる。
「ほら、大の大人のガチ泣き。爆笑モノ」
「ファッ!?」
「体毛首から下全剃りしてやってさぁ、そのまま出勤すれば? ってパンツ燃やしてからスーツ渡したら泣きだし「しまえしまえ馬鹿野郎そんなものここで晒すなむしろ消せリーダーの名誉のために今すぐ消せこのド鬼畜欠陥マンめぇっ!!」
良かれと思って見せたのに。
酷い言いぐさだ。
画面の中の子どものようにツルツルの姿でスーツを抱いて涙目なショーゴは、青ざめながら半泣きで暴れるウサトに免じて、面白おかしく本人に転送することで手を打った。
思い出のアルバムにもなるじゃん?
俺ってばやーさしー。
ウサトはいい歳をして床ダムしながら食ってかかったが、どうどうと宥めるとジト目で俺を睨みつける。
おもしろ。
アヤヒサ見てる? これこれ。俺、これがくだらなくていいと思う。お前は忠実すぎてつまらない。一回ウサギに生まれ変わってみればいいよ。
俺の思いを知ってか知らずか、アヤヒサは凍死しそうな冷たい目でウサトを眺めながらただそばにいた。
ダメね。くだらなー。
「ウサト、それ届けてやるからもー帰ってちょ」
「は!? なにこのジャイアン。誰かもわかんねーやつに渡さないといけないのー。帰れないのー。咲ちゃんバーカ。リーダー寄越せ」
「あ? だから大宝の部門責任者に渡してやるからよこせっつってんだよ。日本語大丈夫? 説明嫌いだから瞬で理解して? んでショーゴがいいっていったらいつでもあげる。お古で良ければどーぞ?」
「っなんで咲ちゃんが大宝の、っ!? っん、んふ……っ」
話をさえぎり、見せつけるようにウサトの顎をすくって、深く口付ける。
小動物の反抗に付き合う気が向いてねんだよ。めんどくさい。
驚いて力が抜けたウサトの前足から封筒をするりと奪い取り、腰を抱き寄せ、唇の隙間から舌を差し込み、口内を蹂躙する。
上顎。舌先。喉奥。
溢れる唾液は丁寧に舐めてやる。
舌を強く吸うと、無意識にだろう体を押し付けられた。
吸われるのがイイの?
これ、噛んだらヤダ?
噛みつこうとした時、背後から凍りつきそうな視線を感じて存在を思い出す。
「ン、ぅ……っはっ……」
「ふっ……んふふ、もーらい」
「おま、はぁ……っも、くっそ……! くやしー!」
うるせーよもー。
プライドが刺激されたのか、体を離すとウサトは頭を抱えて吠えた。ウサギって吠えるんだ、知らんかったわ。
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