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03※

 膝で擦っていたモノに直接手を伸ばし、下着の上からじっとりと濡れた先端を指で押しつぶす。 「ぅあ……っ」 「手コキしてるだけのくせにすげー湿ってんな。ド変態じゃん。知ってたけど」 「はは、流石に触るだけで勃つのは、ん、咲相手ぐらいだよ」  俺が話を逸らすと、キョースケは紅潮した頬を恥ずかしげに緩ませた。  上掛けを押しのけ起き上がる。  カラーボックスの中からローションボトルを取り、パキャと封を切るキョースケの骨太で痩せた若者らしい腰周りを眺める。 「俺相手だと勃つの? なんで?」 「え、……なんて答えれば、咲は嬉しい?」 「〝理由なんてない〟」  キョースケは「そっか。じゃあ、理由なんかないんだぜ」とジーンズと下着を脱ぎ捨ててしなだれるように笑い、俺の腰に跨った。  牡鹿のような太ももと小ぶりの尻が直に触れ、恥骨に乗っている。熱いカラダ。  トロ……と俺の陰茎とキョースケの屹立の間にローションを注ぎ、キョースケはヌト、ヌト、と腰を前後に揺すって擦りつけながら二本のモノを一緒くたに扱き始めた。 「はぁ……ぁっ…は……」  そうやって生々しい生殖器を絡める裏で、自らの秘部に指を挿れて解していく。  見られることを考えた動きだ。  恥ずかしがりのくせに、声を我慢することもこらえている。そのほうがキョースケの顔は男を煽るから。  確かそう教えたのは、俺だった。  だって、より上手になったほうが売り上げがよくなるじゃん。  あとは素朴すぎるから、ギャップ? 的なのもいいかなって。  キョースケは人気が出て俺はつまんなくなくてウィンウィン。  俺がそう言うと困っていたくせに、キョースケは見事に人の目に映える淫乱じみた生き物へ、受け入れるがまま変貌した。  やんなるくらいのお人好しだわ。 「ぁっ……咲、わかるよ……ん、俺に聞かせてほしいな……お前のこと……」  まったく。  どこまでも平時なくせにやたらクリスマス・イブに相応しいやつめ。  赤橙色の明かりがファンヒーターの隙間から覗き、温風が室内を満たして俺たちを包み込んでいた。  キョースケは腰をよじりながら狭い尻穴にもう指を三本も深々とねじ込み、俺を受け入れる準備を進めていく。 「ンッ……く、ふ……っぅ」  俺からは見えない体の後ろからヌチュ、グチュ、とローションと腸液が混じった水音が鳴るたび、熱を帯びた吐息をはっはっと漏らして感じ入る庶民的な顔立ちの学生さん。  エロいな、とは思う。  普通に考えるとそれはそれは魅力的なポルノ映像に等しいだろう。  快楽の期待に眉根を寄せて火照った肢体をくねらせる若い男の姿は、人によっちゃ金を払ってでも見たい光景かもしれない。  それでも俺は一切手を出す気にならず、されるがままに横たわるだけ。  そりゃあ求められれば誰にでも竿を貸して股を開くような淫乱野郎だけど、こうやって直接刺激してくんないとカラダはその気になんねー。してくれりゃ誰でもお望みのまま。  キョースケはそれにいつも寂しげだ。  仕方ないのに。  俺はそういうカラダだから。 「……んー……痛てぇの? これ」 「っぁ、ふ……大丈夫、全然、っん」  性的な興奮により血流が増して浮き上がった傷に指を這わせるついでに、尖った胸の突起を捻り嬲る。  過去の男につけられた暴力の傷痕は今でもキョースケのあちこちうっすらと残っている。たぶん一生消えねータイプ。  褐色の肌ではそう目立たないのがせめてもの救いだ。  目立っていたとしても、それすらキョースケの健康的でありながら淫らな身体の色気を掻き立てる装飾にすら思えた。  セーターの下に隠したやらしい体。  高校生みたいなファッションして、常識的な大人が引くくらい抱かれてんの。  笑顔が爽やかな人のいい素朴な男前。  質素な食生活で細身ではあるものの骨が太く筋肉がまんべんなくついているので、皮膚の上からでも十分男らしさを感じる。  髪も肌も白い俺とは対照的に、キョースケは浅黒い体と黒い髪を持つ男だ。  そして最も優しく、最も温かい。  生まれついて世界を愛し、物事のステキな部分を見つける天才で、花弁のひとひらや中古のティーカップ、赤ん坊の泣き声や老人の歩みすらかわいがるきれいな人間。  生多今日助。  どこまでも俺と真逆な生き物。 「今日、フラレた」 「んぁっ……」  弾力のあるつぶを指でこねくりながら、ぼんやりと口を開いた。

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