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05※微
「っ咲……お前は……、っん」
今日のご飯はなに? と同じテンションで尋ねると、キョースケは息を詰めて言葉に詰まり、微かに狼狽え顔を歪めた。
それからせっかくやる気のないモノを腹の中で扱いてやっているのに話をするだけの俺に文句も言わず、手を伸ばす。
「じゃあ、な……? もう今日は、なにもしなくってもいいんだぞ」
「キョースケ、なに」
その手が俺の両手を捕まえて、合わせて一緒くたに手の中に閉じ込めた。
これじゃなにもできない。
まるで逃がさないというように熱く柔らかい内部がぎゅう、と俺のモノを締める。
俺と両手を繋いだまま、キョースケは俺の唇にそっと口づける。
「……俺とセックスだけ、してようか」
あぁ、またわからないことが増えた。
「なんで、泣いてんの」
──それからキョースケは俺の質問に答えないまま、性に取りつかれたケダモノのように交わりを求めてよがり狂った。
俺は言われたとおりなにもせず、ただキョースケが求めるがまま応える。
それを責めることもなくこの優しいケダモノは乱れ、喘ぎ、汗の一滴まで舐めとり、快楽に咽び鳴きながら俺の名前を呼び続ける。
それはイブがクリスマス当日に変わっても止まらず、俺は何度もキョースケの腹の中に出したし、キョースケは出すものがなくなってももっともっととイキたがった。
ほとんどずっと入りっぱなし。
俺とキョースケの粘膜が繋がったままで、きっとお互い、壊れてもいただろう。
そしてなにもかもが尽き果てて事後の香りで満ちた部屋で堕落しきった頃──キョースケは俺の頭を抱きしめながら、ポツリ、ポツリと語った。
〝誰しもが当たり前にこなしていることが、わからないから上手にできない〟
〝わからないことが悲しいんだということも、わからないから上手に泣けない〟
「それが俺の一番恋しい人だってことが辛くて、涙が止まんないんだよ」
裸で抱き合いながら汗で濡れた布団の上で聞いた俺は「ふぅん」と答えた。
よくわかんねぇけど、キョースケを泣かせるとか趣味悪いヤツ。
「そんなヤツやめちゃえばいいじゃん。なんにもわかんないなら泣いてやらなくたって、どうせ気づかねーんだしさ」
至極まともなアドバイスなのにキョースケはいっそう泣いて「それでも感情が揺さぶられて手に負えなくなるのが、どうしようもなく愛してるってことなんだぜ」と囁いた。
へぇ、なるほど。なるほど。
ようやく少し理解した。
相手を想って泣けるってことが、それを愛しているかのチェックリストの項目の一つなわけだ。なるほど、ふむふむ。
ゲームの勝機が見えたので、疲弊しきって脱力するキョースケの体をぎゅうと抱き寄せ、甘い首筋に歯型を刻んだ。
「それじゃまずは──どうやって泣けばいいの?」
◇ ◇ ◇
空が白い朝になった。
所はボロアパートの煎餅布団。隣には寝間着姿のキョースケが一人、夢の中だ。
キョースケの体温が高いのでいつの間にか眠っていたらしい。俺は夢をあまり見ないので、気がついたら外が明るいことが多い。
もそりと布団から這い出ると、枕元にメモと珍妙な箱があった。
〝おはよう 咲。
実はクリスマスプレゼントを用意していたから、ちょうどいいので貰ってください。気に入らなければ置きっぱなしで大丈夫だぜ。
俺はたぶんまだ眠っているだろうけど、冷蔵庫の中に茶碗蒸しとおにぎりがあるからそれを食べてから薬を飲んでほしいな。食事はよく噛んで。
メリークリスマス。──今日助〟
メモを置いて添えてあった箱のほうを手に取る。大きな箱じゃないけどなんだろ。
首を傾げて包装紙をはがし箱を開けてみれば、ブランド物のピアスが入っていた。
十四金のハーフフープ。
それでもキョースケにとっては安いものじゃないだろうに、バカだなぁ。
「サンタなんてきたことないって、言ったからかもしんねー」
左耳のシルバーピアスを一つ外して、初めてやってきたサンタクロースからのプレゼントをつける。
センスのいいサンタクロースだ。うねりを帯びた刻印がイイ感じ。
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