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第20話

 新学期、霧矢の姿は詩音のクラスになかった。  噂によると、夏休み中に他校の生徒を相手に傷害事件を起こして、退学になったらしい。 「霧矢くんの、バカ」  ぽかんと空いた席に向かって、詩音はつぶやいていた。  屋台を巡った、楽しい時間。  一緒に見た、美しい花火。  バイクで走った、夜道。  二人で紡いだ、熱いひととき。  そして、最後の短いキス。  すべて、夏の思い出になってしまった。  二度と帰らない、ひと夏の思い出。  詩音は、大きく窓を開けた。  残暑の光の中、秋風がひそかに吹いていた。

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