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第19話

 詩音の案内どおりにバイクは走り、彼の家に着いたのは午後10時過ぎだった。 「ほら、降りろ。それと、メット」 「うん」  バイクから名残惜しく降りた詩音は、これまた名残惜しくヘルメットを霧矢に渡した。 「じゃあな」 「あ、ちょっと待って」  ヘルメットを被ろうとする霧矢を、詩音は慌てて止めた。 「お礼。今夜のお礼、するから」 「いいよ、礼なんか」  霧矢が再びヘルメットを被ろうとする隙をついて、詩音はすばやくその唇にキスをした。  短い、一瞬のキス。  まるで、花火のような。 「おい」 「今夜は、ホントにありがと」 「……じゃあな」 「気を付けてね」  それきり、二人は別れた。  本当に、それきりだった。

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