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第13話 · 夢から目が覚めて

悲 嘆 2019年11月下旬…………… 京都、上京区、河原町通り 手術後の、ICU ルーム…………… 直也は、手術後のベッドの中、 夢か現実かの区別もつかないまま、過去の記憶が………… そこには、幾つもの過去の映像がよみがえり…… 直也を見詰めてくる、 あのこぼれるような、笑顔の圭一の顔があった……‥ 綺麗な顔から覗く、 切れ長の色っぽい眼と、象牙色の肌…… SEXの際の、あの美しい顔を歪めて、快感に悶える圭一の顔………‥ ……………… ……‥浮かびあがった………圭一の料理をしている後ろ姿、 部屋を飾りつけている楽しそうな表情……… 洞爺湖の温泉街を、二人、浴衣で歩き、 花火大会を見上げていたあの夜の、圭一の嬉しそうな顔、 悲しく辛いとき、直也にしか見せなかった、あの泣き顔、 直也に怒ったときは、般若のような形相で睨んできた、 あのときの目……‥総ての映像が、圭一の顔とその表情だった……‥‥ ……‥直也の頭のなかは、いろんな映像が、駆け巡り…‥ それらすべてを、直也自身が、夢の中に、 閉じ込めて、忘れ去ろうとしているのか……… それとも、その映像の中の圭一が、直也に会いに来ているのか…… それを判断することは、直也には、出来なかった…‥… …………… …‥…… ICU いた後、直也は、数日後には、 循環器専門のC4病舎に移っていた………… 意識もはっきりし、思考もできるようになってくると、 直也の頭のなかは、 圭一とのことは、ほんとうにあったのだろうか、 夢の中と思うようにしているだけなのか………と考えていた……… ………しかし、札幌での事は、総て事実だった…… 直也は、5年前、店を手放し、札幌を離れ京都へきたのは、 やはり、圭一との事が、大きな心の傷になっていた………… 圭一を助ける事が、出来なかった…… あの日、圭一が最後に来たのは、 別れを言いにきたのではなく、 直也に助けを求めてきたのではと……… “ どうして、何もできなかったんだろう ” “ 死ぬとは思わなかった……‥考えが甘かった ”…‥と… 後悔しても、後悔しても 、もう、取り返しのつかないことを… してしまったと……それへの後ろめたさが、心を覆っていた………… 圭一が亡くなって、 10年以上経った今でも、圭一の事を、思い出すたび、直也は、 涙が流れてどうしようもなかった……‥ そして、直也の脳裏に、 いつも最初に、浮かんでくるのは、 圭一が訪ねてきた、あの日、 突然、部屋から出て行き、エレベーターに、乗リ込み、 目を伏せたまま、圭一が下へ 降りていく、 直也が見た、圭一の最後の一瞬の姿だった………‥ …………………… …………………………

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