10 / 11

第12話 · 永遠の別れ

慟 哭 2007年5月下旬………… ススキノ · 直也の部屋 夜9時頃…………… 初夏に入り始めた、 この時期、 直也は、前日の酒の飲み過ぎで、2日酔いが酷く、 出勤を取り止めていた……… 店の責任者とは、電話でやり取りをし、 打ち合わせを済ませた…… 頭痛や、吐き気を改善しようと、風呂に入り 軽く食事を済ませ、テレビを見ながら、ぼーっとしていると、 突然、携帯電話の着信が鳴ったので、画面を確認すると、 圭一からだった……… 直也は、電話に出て 「 は ~ い 、どうした ~ ? 」 圭一が切羽詰まったような声を出しながら 「 今、どこにいるの ~ ? 、」 直也は体調が悪くて、 家にいる事を、伝えると、 圭一は、会って話したいと言ってきた… 直也は今から来てもいいと返事をし、圭一を待つことに…… チャイムが鳴ったので、 ドアを開き、圭一を招き入れたが、 居間のソファーで、向かいに座った圭一は、憔悴した 表情をして顔を伏せていた…… 直也は聞いてみた……「 どうしたの ~ ? 」 しばらく黙ってた圭一が、決心したのか、ようやく、口を開いた……… 「 きょう、会社の上司から呼ばれ、 使い込みが分かってしまったの…… 明日、謝罪をしに、 親と一緒に来るようにと 言われて……‥どうしたらいいのか…… 、」 ……‥直也は話しを聞いて、 少し考えてから圭一に言った…‥…… 「 分かった ! 、朝一番で、 お金、用意するから、 俺も一緒に行って謝るから、 きょうは、おとなしく帰って寝な 、! 」……と… ( …… 何で、圭一が、お客さんから預かった、宝石の、 代金を使い込んだのか、……… 直也には分かっていた…‥答えは簡単だった 銀行への支払いが、 毎月25万円位だと聞いていたが、 お金の事で、圭一は、直也に頼ってこなかった…… たぶん、他の人にも同じようにしてたはずだし… その生活の中で、ふと、魔が差してしまったんだろう…… ) けれでも、圭一は家に帰って、 母親に言うなんて絶対、できないと 半分泣きながら訴えてきた……… 二人の押し問答が続き、 直也は体調の悪さもあり段々疲れてきてた……… もう、話しをしだして2時間以上経ち 圭一は、泣きながら、 「 ……死のうと思う…………」 ……‥と言ってきたので、直也は、叱りつけた…… 「 なに、言ってるの ~ 、馬鹿言うな ! 、」 圭一は自分の意思を変える気はなく、 直也は、根負けして来ていた…… 「 これから、失踪してどこ行くの… ? 」…とか聞いて 圭一に合わせる言い方をしてみたり…… ……圭一は一度、家に帰ってから そのあと、失踪するつもりだと言ってきた……… ……この時、また、携帯電話が鳴り出したので、 見てみると、俊貴からの着信だった…… 直也は、すぐに電話に出て、2日酔いで体調が悪く 休んでる事を告げていたが…‥… その瞬間、 圭一が玄関の方へ …… ドアを開け、走ってエレベーに向かって……… 直也は、あとを追っかけた…………夢中で…… 直也が、エレベーターホールに着くと、丁度、圭一が降りていくところだった。 うつむいた圭一の顔が、一瞬見えて下へ降りていってしまい…… 直也はあわてて、圭一の家に電話を入れた。 圭一のお母さんが出たので、 圭一が直也の部屋に来てから語った事を 話し、 「 家に一度帰ると言ってたから、そこで、つかまえてください ~ !! 、」…… と、頼んだ…… 時間が進み、午前2時近くなっても 圭一の家からはなにも連絡が入らなかった…… 直也は不安になっていき、俊貴に電話を入れ、事情を話し、 車を出してもらい、朝方5時ぐらいまで、探し回ったが…… ゆくえは、分からなかった…………… この日は、1日中、なにも動きは無かった…… 圭一はいなくなったままで、どこにも消息がなく、 直也は、きのうの対応を後悔していた…… “ 圭一を部屋から出すべきではなかった、 もっと強く、殴ってでも縛ってでもいいから、捕まえて置けばよかった…… ……そうすれば、圭一は、失踪しなかったのに……… ” 直也は、泣いてしまっていた……… 「 圭 、ごめん、ほんとにごめんよ ~ 、死なないで … 、」 「 考えなおして、戻ってきて… 、頼むから… 、」…と 直也は仕事する状態ではなくなっていた 体も心も、もう、崩れそうだった…… 圭一のお母さんや、直也の実家からも連絡が何回かあったが、 本人のゆくえは、まるっきり分からなかった……… 翌日夕方位に、直也の部屋の電話が鳴り、 まさかと思い出てみたが、 なにも喋っては来ず、思わず、直也は 「 待って !! 、切らないで !! 、頼む !! 、圭 ~ !!! 、」…と叫んでいた… でも、電話は無言のまま、切れた…… ……… 失踪から2日後の昼、直也に母親から電話が入り、大きな声で、 「 吉沢さん、亡くなったよ !!! 、登別で … 、どうして、ついて行かなかったの… !! 、」と、 直也を責めながら、言い立ててきた……。 電話を聞いていた直也の目から、大粒の涙が、流れ出し…… 直也は、崩れ落ちながら謝り続けていた………… ……圭一は、登別のオロフレ峠のメイン道路から外れた、 砂利道の途中、 車に排気ガスをひき死んだ……‥と聞かされ、 直也は、そこが、 2年前、二人が車の中で、 愛し合った場所だとすぐに気付き、さらに、泣き崩れていった……… ………………… ………………… 6月3日、圭一の通夜が執り行われた……… 直也も、直也の家族も八人ぐらいが出ていたが、 式は、暗く、あちこちから嗚咽が洩れていた……… 直也は、圭一のお母さんから、圭一から直也宛の、遺書を渡された…… そこには 『 あなたを、心から、愛してました。 死ぬ時は、一緒が、よかった。 今度は、女に、生まれてくるから。』…………と、圭一らしい、 きれいな文字が書いてあった…… 直也は、思わずトイレに駆け込み、 声を、洩らさないようにしながら、号泣していた……… 涙を拭き取り、歯を食いしばりながら、通夜の 席に戻った直也を………… 憐れんだ目をして、じっと見ている、父親の姿があった……… ………………… …………………… それからすこし経ったある日 直也に、姉から、驚くべき話しが入った ……… が、 もう、今更、なにも言う事はなかった…… それは、圭一が直也に、別れを告げてきた、今から1年半ほど前、 実は、直也の母親が、圭一に、 二人は、別れて、それぞれ男として、正しい道を行くようにと 言っていたと………別れなさいと …………。 直也は、母親を恨むことはしないと……きっと良かれと思っての 事だろうし、 理解できない世界なんだろうし…… ………ただ、圭一には辛い思いをさせてしまって、 ほんとうにごめんなさい………と… また、生まれかわっても、圭一と、一緒になりたい……………… 、 でなければ、 悪霊になって取り憑いてでもいいから、 ……戻ってきて 、そばにいて欲しい…………と………… …………………… …………………… …………………………………………………………………………………… ……………………………………………………………………………………

ともだちにシェアしよう!