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白林さんの爆弾発言に俺の心臓はバクバクしっ放しだ
隣の爽を見ても特に慌てた様子もなく俺だけが翻弄されている
「で、華くんは進路決まってないんだよな?」
「あ、はい」
「っじゃあ!」
「うん、華くんが良ければ、の話だけど」
「??」
嬉しそうに声を上げる爽と頷く白林さん
なんか通じ合ってるけど、さっきから俺だけ話についていけず頭にはてなマークを浮かべる
「清水くんだけだと、アイドルをやっていた訳でもないしぽっと出の一般人で話題性がない。有名になるのに何年も掛かるだろう。だから華くんさえ良ければ、卒業後にここに入って、華くんと清水くんの対照的な二人組でウチが全力で大々的に売り出したら短期間で知名度アップ出来ると思う。この事務所、結構大きいからね。もちろん、入った後はレッスンとか色々あるけど。」
「俺やりたいです」
白林さんが早口過ぎて良く分からなかったけど、要するに爽と二人組で芸能界デビューって事だよな。
…っでも…。
そんな簡単に『やります』と即答できるわけが無い。爽は芸能界入りするのが夢の第一歩だから願ってもないチャンスだろう。だけど俺は?事務所入りして大々的に売り出すって言っても俺にはそんなに買い被る才能もないし、人目を惹く容姿でもない。爽みたいに明るいわけじゃないし、親にだって迷惑掛けるし反対されるだろう
「あの、俺…」
「ゆっくりでいい。大学に行きながらこっちにもレッスンに通うって手もあるから。」
「…はい。でも前向きに考えます…」
「ふうあー」
風呂場に俺のため息が響いた
白林さんはああ言ってくれたけど俺の頭の中は昼の事でいっぱいだった。顔をお湯につけてぶくぶくしたけど行き場のない悩みは吐き出す息とは真逆に溜まっていくだけだった。
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