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静かにゆっくり地面から離れるゴンドラ。スケスケの床に俺はぶるっと身震いする。よりによってなんで透明のやつなんだよ
ちなみに隣には黒川さん。普通、観覧車って向き合って乗るもんだと思ってたから手を引かれた時は本当にびっくりした。びっくりしたのは手を引かれたからじゃなくて、俺がよろけたので揺れたゴンドラのせいだ。絶対に。
どんどん高くなっていくゴンドラに薄目で耐える。頂上を少し過ぎた所で、黒川さんは自然に俺の肩を抱き、何の脈絡もなく話し始めた。
「なぁ俺さ、華を幸せにしたい。色々順番が前後したけど、お前が好きだ。付き合ってくれるか?」
「…ぁ、え?」
見上げた顔はどこか不安そうで思わず二度見してしまう。…さっきは同じこと言いながらあんなに自信ありげな顔してたくせに
耳まで真っ赤にして俺の返事を待つ黒川さんは少し幼く見えた。ちょっとかわいい、かも。
目が合うとスイっと逸らされて、モヤっとしたので床が透けているのも忘れて立ち上がり真正面に回り込む
「男に二言はありません!!死ぬまで幸せにしてくれないと末代まで祟りますから!!!」
「…ッハハ、俺の番様はとんでもねぇな」
腕を広げて笑う黒川さんにタックルする勢いで抱きつく
ぎゅうううう、と苦しいくらい抱き締められて胸がいっぱいになった
「なぁ、キス」
「…ムードないですよね…もう頂上過ぎました…」
「悪い。早く目閉じろクソガキ」
「…はい」
綺麗な瞳が近付いてきて、静かに目を閉じると、ドキン!ドキン!と痛いくらい心臓が跳ねる。さらば俺のファーストキス…!
ふにっと合わさる唇
想像していたより遥かに優しいキスに俺は目をあけた
「…っ?!?、!」
「おぉ、目閉じてろよ」
「近いっっっです!!!」
「キスしたからそれは当たり前」
「っもーーー!!!!」
俺はめちゃくちゃ心臓が壊れそうなくらいドキドキして頭が真っ白だったのに黒川さんはキスの一つくらいなんて事ない、って感じで『あ、終わった』と言いながらゴンドラを降りていく
「もう!もうもうもう!いっつも俺ばっか!!」
「早く降りろ、あとお前だけじゃないから」
「へ?」
『足元にお気を付けて』と係の人に言われてバカ正直にちゃんと下を見ながら降りていた俺は黒川さんの二回目の赤面を見逃していた。
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