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9 side 金条 華

風邪ひくからと言ってベッドに逆戻りして向かいあわせで座る。額をコツンと合わせられてもう泣いている顔を隠す術がない。 「迷惑なわけないだろ、家の鍵も渡した。」 「…はい」 「俺はお前に頼ってもらいたい」 黒川さんは本当にそう思ってそうな顔をして言うけど、 それに甘えて、そうですね、まぁ俺がオメガなんでヒートが治まるまで一緒にいるのは番だから当たり前な事ですよね。なんて言えるはずがない。世の中にはたった独りでヒートに耐えているオメガもいるし俺が耐えられないのはただ俺が弱いから。 迷惑じゃないって言われても俺のヒートのせいで五日間も仕事を休ませてしまったのは事実だし、やっとちゃんとしたヒートが来てオメガとしての自分を少しだけ好きになれた気がしたのに、結果は大好きな人に迷惑をかけただけだ。 やっぱりこんな俺は自分を好きになれない。 迷惑をかけるくらいなら一人で耐えた方がマシだ。 「華、聞いてる?」 「うっ、うん…あ、え?黒川さん…?」 ずぶずぶ思考の渦に飲まれていたけど俺はいつもと違う黒川さんの口調に驚いてつられて友達と話すみたいな口調で返してしまう。 驚いた俺の顔を見て黒川さんも『あっ…言っちまった』みたいな顔してるけど聞いてしまったもんは忘れられない。 「き、聞いてる、です」 「…気にしな、…気に、するな…」 「楽な方で大丈夫です…」 俺の返事も変になるし普段の黒川さんからは考えられないくらい目を泳がせてもう動揺が隠しきれてない。 ちょっと耳が赤くなってて恥ずかしそうだ。 「…部下に舐められない為に…頑張ってんだけど…華の事で焦ったりすると…ごめん」 「いや…なんか年相応な感じで好きです…」 普段と違って違和感があるけど砕けた雰囲気なのは嬉しい。いつもクールで冷静で大人っぽいから忘れがちだけど黒川さんはまだ21歳だった…。俺と3つしか変わらないんだ。なんかすごく言葉では言い表せないギャップ萌えがやばい。 「…なんだその顔」 「…うれしくて…」 数十秒前まで自己嫌悪していたのなんか忘れてめちゃくちゃニヤニヤしてしまう。黒川さんは『変な顔だな』と言って笑ってるからニヤついてるのはバレてはないっぽい。 それから少し話し合って結局今日は泊まって明日の朝、黒川さんが仕事に行く時に家まで送って貰う事に落ち着いた。

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