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自分の恥ずかしい行動に気付いて右手と右足が同時に出そうなくらいギクシャクしてしまう。 そんな俺を見て黒川さんは愉快そうに笑ってるけど笑い事じゃない。 「笑いすぎです」 「可愛いじゃん」 さすがにこれ以上腕を組み続けるのは諦めて手を握ってみる。暗いし、人が多くてはぐれたら迷惑かけるからって自分に都合のいい言い訳して。するとサラっと恋人繋ぎに変えてくれた。強く握られる右手に俺の心臓は全力疾走した後みたいに鳴り続ける。俺ばかりどんどん好きになっていってしんどい。 「そろそろイルカショーだな」 「ですね」 プールに移動すると結構人が集まっていて席は少ししか空いていなかった。 「華が好きな所でいいぞ」 「いいんですか?…んー…あ!あそこ空いてます」 ぐるっと見回し、目に入ったのはプールの真正面の一番後ろの席。 あそこなら水に濡れる心配もないしショーの全体を綺麗に見れるんじゃないかな。 あそこにしよう!と決めて繋いだ手を引っ張る。 「ここにしましょう」 空いた二つの席のうちのひとつに座って黒川さんを見上げるけど黒川さんは突っ立ったまま動かない。 しかもなんか驚いてるのか心配してるのか変な顔してる。 「本当にここで良いのか?前じゃなくて」 前…って…小学生までだったら迷わず最前列に行ってたと思うけどもう高三だし濡れるとベタベタしそうなのが気になる。 それにかっこいい黒川さんを濡らすわけにはいかない。 濡れた黒川さんもかっこいいけど今日はちょっと髪の毛が…上手く言えないけどいつもとなんか違って格好良いから濡らすのは駄目なんだ。 「いや…そんな子供じゃないですし黒川さん多分濡れちゃいますよ」 「そ、そうか…ありがとう」 黒川さんが俺の隣に座ると同時に客席のライトが暗くなる。もうすぐイルカショーが始まるみたいだ。

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