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「着いたぞ」
水族館からの数十分なんて秒だった。もうコンビニの駐車場に着いてしまう。
言われなくても分かってるし何なら着くまでどこかで渋滞になったりしないかなとか少なくとも5回は思った。
それくらい黒川さんとバイバイしたくない。
中々車から降りようとしない俺に黒川さんはもう一度俺の名前を呼ぶ。
「華?」
「あの、1分だけ、…」
1分だけ、1分経ったらさよならするからそれまで許してほしい。そう思いながらシートベルトを外し、思い切って身を乗り出して隣の黒川さんに抱き着いた。
「おぉ、どうした?」
黒川さんは驚きながらも俺と同じようにシートベルトを外して抱き締め返してくれた。
今日の俺は変だ。
超寂しがり屋になってしまった。
車の外に出たら現実世界なんて嫌過ぎる。
「寂しくなった?」
言い当てられて体が強ばる。『寂しい』と言ったらもっと寂しくなって泣きそうな気がしたから黒川さんの肩に頭をぐりぐり擦り付けて言えない分を精一杯アピールする。
あとちょっと匂いを嗅いでしまった。やっぱり黒川さんはいい匂いがして離れたくないのが酷くなった。
それから暫く無言の時間が過ぎた。
もしかしたら1分なんてとっくに経っていたのかもしれない。
「華、華〜?…1分経ったけど?」
「…あと10秒です」
「10、9、は、」
「数えないでくださいよ!」
駄々っ子するとカウントダウンが始まる。しかも結構早い。抱き着いた体は小刻みに揺れてるから多分笑っているんだろうけど笑い事じゃない。俺は寂しすぎて死にそうなんだ。
その後も『あと5秒』とか『やっぱりあと1分』とか繰り返す俺に黒川さんは少し笑いながら囁いてくる。
「泊まる?」
「、いいんですか?!」
思わず肩から顔を離して見上げると思っていたより距離が近くて心臓がうるさくなる。
これは…ダメそうだ…俺、絶対おかしい!!
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