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「……!!」 自分の息を飲む音がやけに大きく聞こえた。 結婚って、結婚。婚姻届出して挙式して、ってやつ。 黒川さんが、結婚。 俺以外の誰かと結婚する予定があったんだ。 真夏なのに指先からどんどん冷たくなっていく気がする。 ここからは『聞かない』じゃなくて『聞きたくない』に変わる。自分から聞きたいアピールしたくせにもうめちゃくちゃ聞きたくない。過去の事だったとしてもだ。 相手が誰でどんな人だとかどうでもいい。結婚する予定があったってことはその人のこと好きだったって事だし俺以外の誰かの事が好きだった黒川さんの話なんか聞きたくない。 黒川さんは俺のなのに。 俺は黒川さんが全部初めてで、黒川さんの一挙一動にドキドキしっぱなしなのに。 甘い声で名前を呼ぶのも、好きって言って可愛がるのも、優しく接するのも俺だけにじゃなかった。 だんだん気分が落ちて意図せず視線が下がる。 「華?」 「……やっぱりいいです」 俺の知らない黒川さん。 過去まで俺の物にするのは無理だって分かってる。 けど子供な俺は気持ちの整理ができない。 水族館の時だってそうだった。 黒川さんと一緒にいたいのに理央と並ぶ黒川さんを見たくないから一人で行動して、今も黒川さんの事を知りたいのに、結婚の話を聞きたくないからって逃げようとしてる。 「華?どうした?」 「や、やっぱりいいです!聞いてごめんなさい俺もう寝ます!」 真っ黒なドロドロしたものが溢れ出してきそうで‪それを誤魔化すように言った。 聞きたくないその一心で首を振って立ち上がる。 俺は弱いから、黒川さんが誰かと愛し合ってた話なんか聞きたくない。

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