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それだけで嬉しい。
やっぱりオメガでよかった。
「…なら…あの、またちゃんと正臣さんに挨拶したいです。凛堂さんにも会いたいし、」
「あぁ、全然い、…やっぱダメ」
黒川さんのドタキャン事件なんて知らなかったし、この間も色々ありすぎて最悪な印象しか持たれてないだろうから・・・と思って頼んでみたのにあっさり拒否された。
全然いいよ、かと思ったのに!
てか優しそうな顔してたからいけると思ったのに!
「なんでですか!!」
「内緒」
まさか断られるとは思わずに立ち上がって抗議するけど黒川さんの意思は変わらないらしい。
俺は心の中で黒川さんにたくさんバカバカと言った。
*
あれからさっさと歯磨きして寝るぞって言われたので大人しく二人で歯磨きして今はベッドの中。
せっかくお泊まりできるんだから一秒も離れたくなくて珍しく俺から抱き着いたりなんかしちゃってる。全身黒川さんの匂いに包まれてドキドキするけど安心感がすごい。
「たまにはこうやって何もしないで寝るのもいいな」
「ですね・・・やっぱり正臣さんにあいさ」
「駄目」
言い終わらないうちにぶった斬られて悔しい。
ムッとしてみても『駄目なもんは駄目』と言われて効果なし。俺だって理由を言ってもらわないと納得できない。
「何でですか!」
「・・・正臣さんって呼ぶの嫌」
嫌、って・・・ならなんて呼べばいいんだ。
会長さんはさすがに怒られそうだし。
俺よりむすーっとして俺から顔を背ける黒川さんは少し、いや、かなり子供っぽくて可愛い。
でも黒川さんは黒川さんだし、正臣さんの事をお父さんなんて呼んで『お前の父さんになった覚えはない!』とか言われたら絶対チビる。
「だって華さ、セックスの時か〜何か思い切った時しか廉さんって呼んでくれねーし。俺だって廉さんがいい」
うっと唸る。だって下の名前で呼ぶって意識してる人だと超恥ずかしいんだ。
めちゃくちゃ恋人って感じして、ムズムズする。
でもここで廉さん呼びしないと正臣さんに挨拶できない。
俺は絶対黒川さんとずっと一緒にいたいから正臣さんには気に入られておきたいところだ。
「廉さんのお父さんにもう一回挨拶したいです駄目ですか!」
こうなったらやけくそだ。
なんの早口言葉だってくらいのスピードで言ってぎゅっと目を閉じる。
お願いだからいいよって言ってくれ・・・!!
1秒・・・2秒・・・3秒・・・
たっぷり時間をかけて閉じていた目をそっと開ける。
「・・・いいよ」
えっ!!!!今いいよって!!
顔を上げると黒川さんは優しく微笑みながら俺を見下ろしていた。
「えっ…ヤクザがそんなにチョロくて大丈夫ですか…」
「凛堂に言いつけるぞ」
「…指は大切なので言わないでください」
「夏休み終わる前に行こうな」
「ンフフ・・・はい・・・」
あぁ〜・・・頭撫でられたら眠くなる・・・
「おやすみ華」
「・・ん・・れんさん・・・だい、…すき…」
今日は気を張っていたせいか温かい手で頭を撫でられ急激に眠気が襲ってくる。
それに抗わず大好きな黒川さんにちょっと笑って目を閉じた。
ちゃんと笑えてたらいいな。
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