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「華、大丈夫か?」 あれから数分、息が整うまで抱きしめてもらった。 正直まだくっついていたかったけど渋々離れる。 「…ごめんなさい…」 「…で、どうする?」 脈絡のない問に首を傾げると黒川さんはフっと笑いながら衝撃の一言を言い放つ。 「殺すか?」 「…………え?」 『この後どうする?』みたいなテンションで聞かれたから反応に遅れてしまう。 殺すって・・・殺すって事だよな・・・ 冗談かと思ったけど黒川さんの顔はとてもそういう感じではない。人の命を奪う事は黒川さんにとってどうって事ないのかもしれないがどうも現実味が無く返事に困る。 当たり前だが俺は人の命を奪った事なんかないしこれから先もないだろうと思っていた。 だけど今、俺の一言で人間が一人、命を奪われそうになっている。それを意識するだけで冷や汗が出てきた。 本音を言うと殺したいくらい憎い。 でも冷静になると自分は最後までやられてないし殺す程ではないのかもしれない。 俺はどうしたらいい? 「…俺、多分 最後までされてないですよ?」 「確認してないし。最後までしなかったから許すのか?」 「…いや…そういう訳じゃないですけど…」 「未遂だからじゃ済ませない。襲おうとしたのは事実だし華が許しても、俺は許さない。俺の番に触れてパニック起こさせた、それ相応の事はするつもりだ。」 「…でも、殺す、って…」 やっぱり答えられなくて俯くと、窒息しそうなくらい強い力で抱き寄せられる。 「…重いと思うか? …これが俺の愛だ。俺の愛し方だ。 受け取ってもらいたい。」 喉で息が絡まって変な音をたてる。 普通に重いと思った。 他人の命と俺を天秤にかけて、間違いなく俺に傾くのが。 嬉しくないわけじゃない。 ただ、たった一人、ちょっと体を触られた俺だけのために他人を殺してまで騒ぎ立てる事なのか、そう思った。 なんて答えたらいいか分からず目を泳がせる俺に黒川さんは溜息をついてスマホを耳にあてた。 電話をするんだと思って膝から下りようとしたら腰を押さえつけられたので動けず、せめて静かにしていようと口を押さえる。 「佐伯、全部知ってるな。明日の午前中に倉庫だ。」 相手は琉唯くんだ。 でも今授業中だから電話には出られなくね?てか倉庫って絶対物置く倉庫じゃないよな?ヤクザの倉庫ってイメージだけどきっと暗くて寒くて血の匂いが・・・ 「琉唯くん授業中じゃないんですか…あと倉庫、って…」 「佐伯もここに来てる。お前が行く所には必ず着いて行ってる。二度と妙な気起こさない様に教えてやるだけだ。心配しなくていい。殺しはしない。」 黒川さんは心配しなくていいって言うけど、結局俺がどうして欲しいか言った方が先生はまだマシな結果だったのでは無いかと思ってしまった。

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