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そのまま黒川さんの肩に手を置いて、少し顔を傾ける。
「華?」
黒川さん、びっくりしてる。
黒川さんが驚くなんてあまり見れないな、と思いながら形の良い唇に自分の唇を押し当てた。
俺から舌入れるとかまだ無理だから、今の俺からの精一杯のキス。
「…なんだよ…」
「…ぁ、…キス…したかった、です」
「可愛い」
小さく呟いても静かな浴室では丸聞こえで、気を良くした黒川さんにものすごい力で抱き締められる。
「…かわいい…かわいい…可愛すぎる…可愛い、…」
可愛い可愛い連発する黒川さんだけど、俺の頬にあたる耳は熱いし素肌に感じる心音はとても速い。黒川さんの方が可愛い。
「…ふふ…」
「可愛い、可愛い。ベッド行くぞ。後でまた一緒に風呂入ろうな。先に消毒だ」
毎度の事ながら俺に拒否権はなく、素っ裸にバスタオルを巻かれ姫抱きで寝室まで強制連行。
俺の体はバスタオルがあるから濡れてないけど黒川さんは拭いてもないから廊下はびしょびしょ。
「なんで持てるんですか」
「お前縦に長いよな…もうちょい太れよ」
つまり俺は筋肉がないと…。ガーンと効果音がつきそうなくらい落ち込んでいるとあっという間に寝室に到着。
寝室は裸でも寒くないくらい、だけど暑くない温度にされていて完璧な気遣いにときめく。
黒いシーツの上に下ろされて覆いかぶさってきた黒川さんで視界はいっぱいになった。
流れで首に回した両腕で引き寄せようとすると、唇同士が触れる直前でピタッと止まられお預け状態。
「キス?」
わかってるなら早くしてくれればいいのに、今日の黒川さんは言わせたがりみたいだ。
仕方ないから少し体を起こしてまた俺から当てるだけのキスをする。
「好き?」
「?、…ん、…」
ちゅっ、ちゅと至る所にキスを落とされながら首を傾げる。
キスが?黒川さんが?それとも他の何か?
でも答えは決まっている。
「黒川さんなら何でも好き!全部好き!大好き!」
「いてっ」
勢い余って起き上がると額をぶつけた。
でも痛さなんか気にならないくらい感情が昂る。
好きで好きで、もう体が、もちろん気持ち的にも黒川さんしか受け入れられなくなってしまった。
「大好き…俺、黒川さん大好き」
「華?」
もっと言わないと全然伝わらない。
俺はこんなに黒川さんが好きなんだよって毎秒伝えないといつか爆発するんじゃないかと思うくらい好き。
触って欲しいのも触りたいのも独り占めしたいのも全部黒川さんだけ。
「俺っ、俺、黒川さん…」
やばい、なんか泣きそう。俺変になったかも。
涙が零れない様にぐっと我慢して俯くと、大きい手に顔を挟まれ、無理やり上を向かされる。
「大丈夫だ」
「…っん、うん、うん…」
何がなんて何も分からないけど黒川さんが大丈夫って言うならきっと大丈夫。
もう止まらない涙を隠す術も無く、黒川さんの言葉に何度も頷いた。
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