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「お疲れ様〜、また来週もよろしくね〜」 バイトが終わり、ぺこりとお辞儀をして店を出ると生温い風が全身を包む。黒川さんと同棲を始めて半年、もう九月だ。 去年の今頃、俺の部屋でプロポーズされたなぁ〜。 でも俺と黒川さんは結局、籍を入れていない。 話し合った結果、俺が成人してからって事になったからあと1年くらいだ。 「若いつも通り?」 「いや今日は遅くなるって言ってた」 出る時に黒川さん、少し遅くなるって言ってたしゲームでもしよう。 「何それ」 「やる?面白いよ」 最近始めたパズルゲーム。脳の活性化のために使ってるけど案外面白い。 ゲームに没頭する事数十分。 「なぁ、結構時間経ったけど少しってどんくらい?」 早速アプリをダウンロードして挑戦していた琉唯くんがふと顔を上げて聞いてくる。 そういえば何時くらいになるかは聞いてないな。 まぁ、黒川さん社長?だし色々忙しそうだからこういう日もあるんじゃない? 「少し、って言うには時間が経ちすぎてると思うんだけど」 「……」 琉唯くんの問いに返事できない。琉唯くんの言う通り『少し』というには長すぎるくらい時間が経っている。 あ〜…。前にもこんな事あったなぁ。 花火大会の待ち合わせ。あの時は落ち込んだけど黒川さんを信じてよかった。 「まぁ、うん、前にもこんな事あったしもうちょい待ってみる」 「えーー早く帰りて〜」 ごめん琉唯くん俺のせいで。ブラック企業だね。と心の中で謝る。 琉唯くんは俺の護衛自体が仕事だからお金は貰ってるはずなのになぜかバイトまで俺と一緒に始めた。 理由を聞くと、着いてきてお前がバイト終わるまで待ってる時間が勿体無いから、らしい。 まぁそのお陰で俺は毎日安心しながら過ごせるんだけど。 「あ〜もう!あちぃ〜〜〜!」 「ホントごめん」 早く黒川さん来ないかなぁ、と思いながらスマホに視線を戻したその時、画面がパズルゲームから着信画面に変わった。 平和な日常なんて、呆気なく崩れ去ってしまうという事を俺はまだ知らない。

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