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晴天の霹靂
「ぅわ」
「危ねぇ〜、ほら、早く出ろよ」
ビックリしすぎて落としたのを琉唯くんが見事な動体視力でキャッチしてくれた。
忙しなく着信を告げるスマホ。非通知って怖くて苦手かも。
応答ボタンを押すと、しばらく聞いていなかった声が聞こえてきた。
『あ!繋がった!華くんの携帯で合ってる?』
「あ、はい」
電話を掛けてきたのは正臣さん。黒川さんのお父さんだ。
『今一人かな?』
「佐伯くんと二人です」
そういえば電話番号交換してなかったなぁ。
急に何の用だろう。
『そうか、実はさっき警察から連絡が来て──』
正臣さんの声が遠くでボーっと聞こえる。
「……………」
………いま何て言った?
「……な、…おい華!」
しばらく何を言われたか分からずに呆然とする。
ぱちん!と乾いた音が聞こえて、俺の右頬が熱くなった。
「華!誰から何て言われたんだよ!」
ハッとすると目の前には眉をぎゅーっと寄せた琉唯くん。
頬がぴりぴりひりひりする。
そうだ、俺、電話してたんだ。ていうか叩かれた…。
貸せ!と怒鳴った琉唯くんが俺の手からスマホを奪って話し始める。
段々と顔色を失っていく琉唯くんに、今言われた事は嘘ではないと実感して頭が真っ白になった。
「誰ですか!えっ、会長?!……はい、早野さんに連れてってもらいます」
「あ、…」
「急いで戻るぞ!」
ガシッと腕を掴まれて花屋さんまでの道を逆戻りする。
俺いつも琉唯くんに引っ張られて走ってるなぁ…。
「はぁっ、はっ、」
『──廉が信号無視したトラックに撥ねられて──』
息苦しいのなんか気にならない。足がもつれて何度も転けそうになるけど、その度に琉唯くんに引き上げられる。
「早野さん!!若が!!」
事情を聞くとすぐに車を出してくれた早野さん。
車の中で、ずっと正臣さんの声がループする。
「…琉唯くん…」
「大丈夫だって」
琉唯くんは俺を安心させるように緩く笑い、それ以降何も言わない。
それが逆に不安を煽った。車内はお通夜レベルで静かだ。
もうしりとりでも何でも良いから喋って欲しい。
どうしよう、どうしよう、黒川さん、大丈夫かな。
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