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「早野ありがとう。華くん、こっちだよ」 病院の入口で待っていた正臣さん。 俺だけ呼ばれて院内に入る。 着いたのは手術室の前。そこにあるベンチに座って項垂れているのは、多分理央だ。 「あの、…正臣さん…」 「…廉はきっと大丈夫だよ」 正臣さんも、珍しく本家で仕事している時に急に電話がかかってきて、理央と共に駆けつけたらしい。 薄暗い廊下で赤く光る『手術中』という文字からすぐに目を逸らした。 「…廉…起きるよね…?」 いつものキャンキャンうるさい理央から発せられた声だとは到底思えないくらい沈んだ声が響く。 「ねぇお父さん廉起きるよね?大丈夫だよね?」 「…終わるまで待っていよう」 正臣さんは問いに答えず、理央の横に座り肩を抱き寄せた。 俺は黒川さんが事故に遭ったという実感が湧かず、ただ突っ立っていた。 それから数時間経った頃、『手術中』のランプが消えた。 「先生っ」 「手術は終わりましたが意識が、──」 俺の記憶にあるのは、手術室から出てきた医師に詰め寄る正臣さんの姿と、 「ぁぁぁあああぁぁあ」 医師から話を聞いて泣き崩れる理央。 そこでその日の記憶は途絶えた。

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